寺田凛奈は全身を震わせた。
奥様の各種指標を確認していた彼女は、体を固くし、ゆっくりと頭を下げると、いつも見覚えのある感じを与えてくる小さな男の子が、今や彼女を見上げているのが見えた。
彼はマスクと帽子をつけていて、顔ははっきりと見えなかったが、その見慣れた目には慕う気持ちと願いの情が満ちていた。
寺田凛奈の頭は突然真っ白になり、何かが思い浮かびそうになったが、そのとき、また別の機器が警報音を発した。
人命救助が最優先だ。
彼女は注意力を集中し、しっかりと見ると、奥様の血圧が少し上昇していることに気づいた。
今泉唯希も急いで入ってきて、寺田凛奈に気づいた。彼女はマスクをつけ、眉をひそめた。「あなたは誰?ここは集中治療室よ、すぐに出ていってください!」
「寺田さんは私が呼んだんだ。」
藤本凜人がすぐ後に続いて入ってきて、命令した。「彼女に救命活動に参加させろ。」
今泉唯希の動きが一瞬止まり、目に一筋の厳しさが閃いたが、突然何かを思い出したかのように、彼女は頷いた。「わかりました。」
病室内は再び慌ただしくなった。
藤本凜人は建吾を連れて出て行った。
寺田凛奈は空気を読んで脇に立っていた。
今泉唯希は突然彼女を見て、口調に皮肉と軽蔑を隠しきれずに口を開いた。「ニトロプルシドナトリウムを注射するんですよね、寺田先生?」
これは最も基本的な降圧薬だ。
寺田凛奈は頷いた。
今泉唯希は素早く薬物を注射し、再び奥様の病状を安定させた。
寺田凛奈はカルテと最新のCTスキャンを見て、心の中で状況を把握してから、今泉唯希と一緒に外に出た。
今泉唯希が前を歩いていて、ドアを出るやいなや、藤本凜人が彼女に向かって歩いてくるのを見た。彼女はマスクを外し、厳粛な表情で口を開こうとしたが、藤本凜人が彼女の横を通り過ぎ、真っ直ぐに寺田凛奈の前に行き、緊張した様子で尋ねるのを見た。「手術はできますか?」