寺田凛奈は彼のぶつぶつ言っていることを全く聞いていなかったが、最後の言葉を聞いて驚いて顔を上げた。「何?」
臼井真広は少し恥ずかしそうな表情を浮かべた。「君を許すことはできるけど、君の評判が悪くなってしまった。もし僕が君と結婚したら、臼井家の恥になってしまう。でも、外で別荘を買って、一生君の面倒を見ることはできるよ。」
寺田凛奈は可笑しくなった。彼女は冷ややかな口調で、皮肉を込めて言った。「私を囲いたいの?恐らくあなたには無理でしょうね。」
臼井真広は急いで口を開いた。「僕にはお金があるよ!毎月10万円の生活費を渡すから、好きに使っていいよ。」
10万円では芽ちゃんの服を買うのにも足りないだろう。
寺田凛奈は彼がうるさいと感じ、左側から彼を避けて通り過ぎようとした。「他人の愛人になる気はないわ。」
臼井真広も左に寄って彼女を遮った。「じゃあ、僕と結婚したいの?それも悪くないよ!」
彼は歯を食いしばった。「どうせ祖父が君と結婚しろと言っているし、君の子供は女の子だから、将来少しの持参金を渡して嫁がせればいい。彼女が素直で従順で、弟や妹と争わなければ、我が臼井家も渋々認めてもいいだろう。」
彼は自分の出した条件が十分寛大だと思っていた。どんな女性でも感謝して喜ぶはずだと。
しかし、予想外にも寺田凛奈の目が冷たくなり、周囲に冷気が漂った。「私の娘は、どんな不当な扱いも受けない。」
臼井真広は眉をひそめた。「寺田凛奈、図に乗るな!まさか君の娘に臼井の姓を名乗らせて、僕たちの子供と同じ待遇を望んでいるのか?言っておくが、それは絶対に無理だ!」
その時、鋭い声が突然聞こえた。「寺田凛奈、またあなた真広お兄さんを誘惑しているの!」
この言葉とともに、寺田佐理菜の姿が飛び出してきた。彼女は手を振り回しながら寺田凛奈に向かって突進しようとした。「許せない!」
臼井真広は彼女を遮り、怒鳴った。「何をしているんだ?」
個室にいた寺田健亮、富樫和恵、そして臼井真広の父親が物音を聞いて出てきた。3人の姿を見て、寺田健亮は怒鳴った。「寺田凛奈、またお前は妹をいじめているのか?すぐに妹に謝れ!」