ちょうどそう思った時、高岡佳澄が口を開いた。「愛と寄り添いもありますよ。」
寺田凛奈は「……」
高岡佳澄は熱心に続けた。「奥様は早く亡くなりましたが、あなたのために道を敷いてくれました。彼女はもういませんが、彼女の心はずっとあなたと一緒です。」
「……」
高岡佳澄が1時間以上も母性愛について語り続けた後、食事を済ませたばかりの寺田凛奈は我慢できずにあくびをした。
高岡佳澄はようやく自分が長々と話し過ぎたことに気づいた。「お嬢様、あなたも今や成人しました。いつ会社を引き継ぐおつもりですか?」
会社には愛着と所属感が生まれていたが、会社はお嬢様のものであり、確実に戻すべきだった。
しかし、寺田凛奈は冷淡に言った。「あなたがうまく管理しているので、そのまま続けてください。」
小さな会社で、通常の各部門もなく、ほとんどすべての仕事を自分でこなさなければならず、睡眠時間を奪われすぎてしまう!
高岡佳澄:?
寺田凛奈は尋ねた。「臼井家は会社を買収する意向はありますか?」
臼井家が本当に会社の発展の可能性に目をつけているのなら、臼井真広の幸せを担保にする必要は全くなく、直接高額で買収すればよいはずだ。彼らにはお金がないわけではない。
しかし高岡佳澄は首を振った。「いいえ、ありません!」
寺田凛奈は眉をひそめ、理解できないのでもう考えないことにした。「高岡おじさん、もし母が私に渡すように言っていたものがあれば、思い出したら電話してください。」
「はい。」高岡佳澄はさらに言った。「お嬢様、銀行口座番号を教えてください。これからは会社の配当金を直接あなたに振り込みます。」
以前は寺田凛奈が幼かったため、成長して海外に出てからは、高岡佳澄は後見人に配当金を渡していた。
500万円は寺田凛奈にとっては大したことではなかったが、なぜ寺田家に渡す必要があるのだろうか?
彼女は口座番号を残して立ち去った。
一流ホテルの最上階。
藤本遊智は大の字になってソファに座り、書斎にいる藤本建吾を軽蔑的に見ていた。
藤本家はこの世代で、嫡系は京都の大房と二房だけだった。