藤本凜人は病院で救急の天才と称賛されたことを思い出し、興味深げに頷いた。「うん。」
しかし、二人がロビーに入るや否や、助手が近づいてきて、声を落として言った。「藤本社長、本家から人が来ました。今、最上階に向かっています。」
藤本凜人は顔色を変え、大股でエレベーターに向かいながら、険しい表情で尋ねた。「いつ来たんだ？」
「5分前に上がったばかりです。ここは藤本グループの施設ですから、受付やロビーマネージャーでは止められませんでした。」
「無能め！」
藤本凜人は怒鳴りつけると、すぐにエレベーターに乗り込んだ。
一方、倉田健祐はため息をつくと、上階の出来事には手出しできないと判断し、一人で監視室に向かった。
最上階の大統領スイートで。
藤本建吾は拳を握りしめ、目に涙を浮かべながら目の前の数人を見つめていた。
双方十数人の黒服のボディガードたちが、怒りの目で睨み合い、対峙していた。
藤本悠佑は建吾の前に立ちはだかり、険しい表情で言った。「次兄、何をするつもりだ？長兄が戻ってきたら許さないぞ！」
目の前の成人男性は、鋭い目つきで鷹鉤鼻をしており、二房の藤本遊智だった。彼は陰険な笑みを浮かべて言った。「弟よ、これはお前には関係ない。どけ。今回来たのは、二代目のおじいさまの命令だ。この不孝者の野郎を本家に連れ戻すためだ！」
藤本悠佑は同意しなかった。「何かあるなら、長兄が来てから話せばいい！今は、彼を連れて行かせない！」
藤本遊智の表情が冷たくなった。「藤本悠佑、図に乗るな！家族の事業に何一つ関わらないお前に、ここで物を言う資格はない！どけ！」
藤本悠佑は怒りで顔を赤らめた。
彼がゲームに専念できるのは、全て長兄が圧力を引き受けてくれているからだ。それに、甥は自分の長男なのだから、こんな事態を放っておくわけにはいかない。
彼は怒って言った。「どかない！」
藤本遊智は手首を動かし、明らかに強そうな様子で言った。「ならば、容赦しないぞ！」
その言葉が落ちると同時に、冷たい声が響いた。「誰に容赦しないつもりだ？」
