渡辺奥様はここまで考えると、目を輝かせて藤本凜人を見つめた。「凜人、少し面倒をかけるかもしれないけど、さっきの寺田さんのことを調べてもらえないかしら?」
渡辺昭洋は意味が分からず、「どうして?」と尋ねた。
渡辺奥様は笑顔を浮かべて言った。「もし私の推測が正しければ、あなたは姪に救われたのかもしれないわ!」
「……」
藤本凜人はこの言葉を聞いて、背後にいる倉田健祐に言った。「寺田さんの情報を渡辺おじさんと渡辺お母さんに送ってください。」
倉田健祐が調査結果を送信した後、双方で資料を確認し合うと、渡辺奥様は大喜びした。「本当に彼女だわ!」
渡辺昭洋は目に涙を浮かべながら言った。「凛奈、なんて素敵な名前だ。早く彼女を呼んできて、会わせてくれ……」
手術をしたばかりで起き上がれなければ、すぐにでも飛んでいったことだろう。
残念ながら、倉田健祐が隣のVIP病室に人を呼びに行ったとき、寺田凛奈は寺田輝星に大きな問題がないことを確認して、すでに出ていってしまっていた。
しかし、寺田輝星から寺田健亮の電話番号を聞き出すことができた。
その後のことは、藤本凜人が介入する必要はなくなり、彼は素直にホテルに戻って息子と過ごすことにした。
一流ホテルの最上階。
藤本建吾は書斎で寺田芽と電話をしていた。
寺田芽は蜜を塗ったかのように甘い声で言った。「お兄ちゃん、あなたって本当に賢いわ!これでママが出てきて、あなたの潔白を証明できるわよ〜」
妹に褒められて、普段感情を表に出さない藤本建吾の頬が少し赤くなった。「君も素晴らしいよ。」
寺田芽は口を大きく開けて笑い、ロリータのような声で言った。「お兄ちゃん、昨日私のピンクちゃんを持って行っちゃったでしょ?今度返してね〜」
藤本建吾は本を持つ手を止めた。「ピンクちゃん?」
「うん〜あのピンク色のプリンセスドレスだよ!」
妹が服に名前をつけているなんて、本当に可愛い小さなお姫様だ。
そう思った瞬間、寺田芽が可愛らしく言った。「お兄ちゃん、ちょっと待ってね。チームメイトに一言言ってくるわ。」
藤本建吾はうなずいた。「わかった。」