栗本放治は深い声で言った。「彼女が先ほど行った救急処置を見なかったのか?このような環境でも手術を行う勇気があるということは、十分な自信がなければ、人を切開することなどできないだろう」
「もう私たちの前で正体を現したのだから、彼女に隠せることなどないだろう?」と言いながら、彼は目を伏せて笑った。
栗本放治は久我月に会う前まで、この少女について軽々しく評価することはなかったが、一橋貴明のことがあって、既に彼女に好感を持っていた。
彼は病弱な体質で、久我月とは何の関係もないのに、彼女は彼の病気について、治療できる人がいると告げる必要などなかった。
栗本放治は心の中で考えを巡らせた。久我月のこの様子は、何か考えがあるに違いない。
中村少華は栗本放治の言葉の意味がよく分からず、思わず七男の若様の方を見たが、二人とも何も言う様子がないので、彼も聞くのを諦めた。
一橋貴明は細めた目で久我月の姿を探し、その影を見つけると、タバコを消して片手をポケットに入れ、久我月の方へ歩き出した。
185センチの長身で、まっすぐに伸びた長い脚、ボタンを開けて鎖骨を見せ、どこか不敵な雰囲気を漂わせていた。
久我月はゆたかドリンクに入り、メニューを一瞥して、低い声で言った。「抹茶ミルクティー一つ、氷なし、無糖で、タピオカとサゴを追加で」
「かしこまりました、少々お待ちください」
店員は急いで応対しながら、注文を打ち込む時も思わず久我月を何度も見てしまった。
わぁ~
すごく可愛いお姉さんだ。
「お姉さん、こちらでQRコードを……」
店員が久我月にQRコードをスキャンしてもらおうとした時、低い声が聞こえてきた。
「抹茶ミルクティーをもう一つ、氷なし、無糖で、タピオカとサゴ明珠追加。一緒に支払う」一橋貴明はQRコードを開いた。
久我月は顔を上げて見た。
背が高くすらりとした男性が彼女の後ろに立っていた。薄い唇、深みのある目元、シャツの袖をまくり上げ、彼女の前に立つと、彼女を覆い尽くすように感じられた。
「あなた……」
久我月が口を開こうとした時、一橋貴明に遮られた。