松本旻は驚愕し、しばらくしてから軽く咳払いをした。「七兄さん、ここには他の人はいないから、本当のことを言うけど、まさかあの子のことが本当に気に入ったんじゃないのか?」
七男の若様の女性に対する態度は、世界中が知っているように、絶対に女性を一寸たりとも近づけさせないものだった。
しかし、久我月に対しては、噂とは全く違っていた。
久我月にタピオカミルクティーを奢り、椅子を引いてあげ、ジュースを注いでやり、そして……間接キスまでしたのだ!
今夜の出来事で、皆が気づいていた。一橋貴明は本当にあの子に興味を持ち始めていたのだ。
でも……本当に信じられないことだった!
「どうした、俺が彼女のことを気に入ってはいけないのか?」一橋貴明は冷ややかに言い放った。
松本旻は大きく驚き、慌てて手を振りながら、取り入るように笑って言った。「いや、もちろんいいですよ。七男の若様が気に入った女性が、どうしていけないことがありましょうか?」
口ではそう言いながらも、心の中では違うことを考えていた。
実際、彼は言いたかった。七兄さんの目は少し曇っているんじゃないかと。
やっと誰かに目を向けたと思ったら、まさか自分の元甥の嫁だなんて。東京での貴方の地位がどれほど高いか考えてください。久我家のあの子は、まだ自分の後輩なのに。
さらに厄介なことに、久我羽はまもなく甥の一橋逸飛と結婚することになっている。そうなれば久我月は逸飛の義理の姉になる。
しかしその義理の姉が、自分の叔父に気に入られてしまうなんて、これはどういうことだ?
一橋貴明は長身を椅子に預け、半分の顔が影に沈んでいた。それによって、彼の本来深い輪郭線が柔らかく見えた。
彼はタバコを一本取り出し、唇に運んでゆっくりと一服吸い、優雅な姿で、細めた瞳には些かの優しさが宿っていた。
灯りの下の一橋七男若様は、この時特に魅力的だった。
人の心を奪うほどに。
皆の期待の眼差しの中、一橋貴明は唇を歪め、不気味で神秘的に笑った。「俺は確かに久我月のことが気に入った。それだけじゃない、俺は彼女に恋をする可能性もある!」
恋?
久我月に……恋をする?