藤原徹は椅子に寄りかかり、手を上げて弁当箱を高倉海鈴の方へ押しやった。
高倉海鈴:「……」
彼女の視線は藤原徹の唇の辺りを彷徨っていた。
そうね、彼女は自分の味覚が贅沢になってしまったことを認めた。以前は何を食べても苦くて、食べているうちに慣れてきた。でも藤原徹とキスをしてからは料理の香りを感じられるようになり、高倉海鈴はもう二度とあの苦い料理は食べたくないと思った。まさに世界で最も苦しい拷問だと!
でも最近、藤原徹は機嫌が悪くて、彼に触れる勇気が出なかった……
「食べろよ。食べたくないのか?」藤原徹はイライラして机を叩いた。
高倉海鈴は3秒考えて、突然顔を上げて笑顔を見せた。「キスしない?」
美味しそうな食事が目の前にあり、結局美食の誘惑に抗えず、藤原徹に向かって邪悪な小さな手を伸ばした。
藤原徹は冷ややかな目で見つめ、喉から軽い哼声を漏らした。「もう一度言ってみろ?」
高倉海鈴は唾を飲み込み、箸で無意識に茶碗の中のご飯をつついた。藤原徹は最近扱いにくくて、このまま続けるべきか迷っていた。
でも……
テーブルの上の餅団子を見て、その柔らかさと甘さを思い出すと、目を閉じ、口を開いて、はっきりと言った。「キスしない?って聞いてるの!」
藤原徹は低く笑った。「悪いけど、させないよ」
高倉海鈴:「!」
からかってるの?!
キスさせないって勝手に決めるの?!
悪い心が芽生え、高倉海鈴はテーブルを越えて身を乗り出し、片手で藤原徹の肩を押さえつけ、頭を下げて、躊躇なく赤い唇を男の薄い唇に押し付けた!
彼女の動きは激しく鋭かったが、彼の唇に触れる唇は信じられないほど柔らかかった。
呼吸の間に、ミントの清涼感が漂う。
藤原徹は革張りの椅子に背を預けたまま動かず、高倉海鈴の好きにさせていた。長い睫毛を少し下げ、漆黒の瞳に一瞬よぎった光を隠した。
高倉海鈴はキスの仕方がまったく分からず、ただ藤原徹の薄い唇を乱暴に噛んでいただけだった。ある時力加減を間違え、男が思わず低い声を漏らした。
低く掠れた声に、高倉海鈴は感電したように手を離した。
新鮮な血が藤原徹の口角からゆっくりと滲み出てきた。
高倉海鈴:「……」