久我羽は犬のように濡れてしまい、まだドアを叩きながら叫んでいた。「誰かいませんか?中に閉じ込められちゃったんです。誰か、ドアを開けてくれませんか?!」
携帯の品質が本当に悪くて、すでに画面が真っ暗になっていた。彼女は声を張り上げて、こんなに長く叫び続けて声が枯れてしまったのに、まだ誰も助けに来てくれなかった。
一橋貴明が男子トイレに行こうとした時、目の端に道具カートの中にアイスクリームコーンが置いてあるのが見えた。
彼はそこに歩み寄り、アイスクリームコーンを取り出して女子トイレの入り口に置き、女子トイレのドアを閉めた。
すると、案の定、久我羽の声は随分小さくなった。
彼はそれで安心して隣の男子トイレに向かった。
久我月はショッピングモールの1階でゲームをしており、久我豪也は彼女を抱きしめながらショッピングをしていた。
「豪也くん、お姉さまが帰ってきたって聞いたわ」と王丸雪は久我豪也の胸に寄り添いながら、久我家のお嬢様について非常に興味を持っていた。
王丸雪は京都の普通の家庭の女の子で、やっと久我豪也という金のなる木を手に入れた。虚栄心が強いが、内心では極度の劣等感を抱えていた。
次女の久我羽に会った後、彼女はようやく自分と豪門との差が、まさに天と地ほどの違いがあることを悟った。
さらに恐ろしいことに、久我羽が一橋逸飛の婚約者になったのだ!
将来、もし自分が久我家に嫁いだら、この義理の姉の顔色を伺わなければならず、久我家での地位など望むべくもないだろう。
やっと長女が田舎から帰ってきたと聞いて、王丸雪は早くこのお嬢様に会いたくてたまらなかった。
田舎から帰ってきたなら...きっと容姿は平凡で、成績も悪く、田舎くさい感じなのだろう?
そう考えると、王丸雪の心は少し落ち着いた。
久我豪也は頷いた。「ああ、久我月が帰ってきたよ」
「お姉さまは...綺麗なの?」王丸雪は急いで尋ねた。
「綺麗じゃないって聞いたよ」
久我豪也は久我羽から送られてきたLINEを思い出し、首を振りながら言った。「二姉さんの話では、この姉は不良少女で、若くして学校を中退したらしい。とにかく田舎者だよ」
「そんなにひどいの?」
それを聞いて、王丸雪の目の底に喜びの色が浮かんだ。