陸氏や季氏のような大財閥には及ばないまでも、全国でもトップクラスに数えられるほどだった。
だから、当初林会長が直々に彼を招聘した時、数日考えた末に承諾したのだ。
林会長は確かに彼を信頼し、会社の全ての意思決定と運営を彼に一任したが、陸氏の出資の件については、形式上林会長に伺いを立てた。ところが林社長は意外にも陸氏の出資を拒否したのだ。
これには彼もずっと納得がいかなかったが、彼も分別のある人間だった。社長が認めてくれているなら、社長の意向も尊重しなければならない。だから、陸氏のような大口の出資者を逃したことは、ただ残念で惜しいと思うだけだった。
今、林会長が会社を喬社長に任せたわけだが、喬社長は若いので、考え方は必ず林会長とは違うはずだ。そう考えて、彼は以前の企画書を再び取り出した。
そう思いながら、彼は喬栩にこう言った。「陸氏は財力が豊富です。陸氏の資金支援があれば、我々の発展ははるかに速くなるでしょう」
喬栩もこの時には陸氏が提出した企画書に目を通し終えていた。認めざるを得なかったが、陸氏側の人間がこの企画書を極めて優れたものに仕上げており、彼女には何一つ欠点を見つけられなかった。しかし...
陸氏は陸墨擎のものだ。彼女は陸墨擎と何の関わりも持ちたくなかった。資金を調達したいなら、必ずしも陸氏だけが選択肢ではないはずだ。
「謝社長、あなたの意図はよく分かります。賛同もします。ですが、一つ考えたことがありますか?我が社は技術開発を基盤として成長してきました。これらの技術は全て我が社の特許です。我々は人材と財力のすべてを研究開発に注ぎ込んできました。陸氏が資金を投入してくれば、後々必ず我々の研究開発技術に目をつけるでしょう」
彼女は謝宇が黙り込むのを見て、さらに続けた。「技術こそが会社の魂です。謝社長、隠しませんが、陸氏財団の陸社長は私の元夫です。私はあなた以上に彼の手口をよく知っています。彼は大鮫であって、小魚ではありません。他人のために尽くすような人間ではありません」
謝宇は陸墨擎が喬栩の元夫だと聞いて、少し驚いた。