彼の向かいに座っているのは長陵重工の取締役会長だった。長陵重工は陸氏のような大財閥には及ばないものの、名の知れた大企業であることには変わりなかった。しかし、長陵重工の取締役会長であるにもかかわらず、この人物は陸墨擎の前では少し緊張しすぎているように見えた。
陸墨擎のような落ち着きと余裕のある態度、ただ座っているだけで場を支配できる存在感に比べ、長陵重工の取締役会長は初めて上位者からの威圧感を感じた。
今回のプロジェクトは、小さくはないが、かといって大きすぎるわけでもなく、陸氏の宗主が直接交渉に出向くほどの規模ではなかった。
陸家の当主どころか、長陵重工の取締役会長さえ出る必要はなかった。
長陵重工は以前から陸氏側が人を派遣して交渉に来ることは知っていたが、まさか陸墨擎が直接来るとは思いもよらなかった。
そのため、陸墨擎をもてなすために出てきたのは、長陵で最も地位の高い取締役会長しかいなかった。
陸墨擎がこれほど重々しく対応することで、長陵重工の上層部は主観的に、今回のプロジェクトが非常に重要で利益の大きいものだと判断せざるを得なかった。そうでなければ、なぜ陸氏の最高ボスが直接関与し、さらには自ら足を運ぶのだろうか。
陸墨擎は向かいの少し落ち着かない様子の男を見て、微笑んだ。「凌さま、お気遣いありがとうございます。私が急に来ることを決めたので、ご迷惑をおかけしました。」
彼の声は淡々としており、その周りに漂う雰囲気と同じく、淡くて軽いものだった。しかし、その威圧感は極めて重く、単純な一言で、向かいに座る同じく企業のトップである人物に恐縮の念を抱かせた。
「陸社長、とんでもございません。」
両者が一通りの挨拶を交わした後、本題に入った。
陸墨擎が今回来たのは、このプロジェクトが主な目的ではなく、凌さまとそれほど長々と挨拶を交わす忍耐もなかった。ただ、横にいる蔣浩に軽く目配せをした。
蔣浩は理解し、うなずいて凌さまに言った。「凌さま、これは以前から貴社と協力してきた企画書です。何も変更は加えていません。貴社側でも既に確認されたと思いますが、他に要求があれば、ご提案ください。双方で再度検討いたします。」