薛夕は必死に抵抗しようと思っていたが、彼女を捕まえたのが向淮だと気づいたとき、なぜか突然心が落ち着いた。
この考えに、彼女は少し戸惑った。
かつては、向淮が危険だと思い、避けようとしていた。でも今はなぜ彼が安全だと感じるようになったのだろう?
薛夕が自分の心境の変化を不思議に思っていると、男が突然頭を下げて彼女の唇を捕らえた……
ドキッ!
耳元で雷が鳴り響いたかのように、薛夕は何か強烈なものが侵入してくるのを感じた。
向淮のこのキスは勢いよく来た。彼は貪欲に彼女の息遣いを奪い、力強くあらゆる場所を探索した。
少女の体から漂う甘い香りが、彼の怒りを徐々に鎮めていき、動きはゆっくりと優しく、そして愛おしくなっていった。
彼は軽く吸い、優しく噛み、軽くなめ、くるくると回して……まるで彼女の口の中にある全ての優しさと甘美さを吸い尽くそうとしているかのようだった。
薛夕はキスで全身がしびれ、頭の中が真っ白になった。彼女は抵抗や反抗することを忘れ、ただ条件反射的に彼に応えていた。
どれくらい時間が経ったのか、ほんの少しの間のようでもあり、また一世紀ほど長く感じられた。そのとき、ドアの外から足音と秦爽の不思議そうな声が聞こえてきた。「あれ?夕さんは私たちを探しに来るって言ってたのに、どこにも見当たらないね?」
この言葉に、薛夕は突然我に返った!
彼女は彼を押しのけようとしたが、力を入れる前に、大きな手が彼女の背中を押さえ、彼女を彼の胸にぴったりとくっつけた。
向淮は彼女から離れ、彼女が怒って口を開こうとしたとき、指を一本彼女の唇に当て、低い声で心を揺さぶるように言った。「坊や、私たちがキスしていることを彼らに知られたいのかい?」
薛夕は目を大きく見開き、恥ずかしさと怒りで口を閉じた。
物置には明かりがついていなかったが、外の街灯が小さな窓から少し差し込んでいた。その光で、向淮は少女のいつもは冷たい頬が赤く染まっているのを見ることができた。
恥ずかしさからなのか、怒りからなのかはわからない。