「そう聞かれて、寺田真治は少し戸惑った。「何?」
木田柚凪は首をすくめる寺田真由美をちらりと見て、誠実に口を開いた。「彼女はダンスが大好きです。子供の興味や趣味を制限するのは、いい父親のすることではありません。」
「……」
寺田真治が表情を引き締めて黙っているのを見て、木田柚凪は藤本建吾に手を振った。「降りて。」
藤本建吾は車から降りた。
二人は手をつないで渡辺家の別荘に入っていった。
彼らが入り口で姿を消すのを見届けると、車のドアがゆっくりと閉まり、車が再び動き出した。そのとき、寺田真治は寺田真由美を見た。
彼は寺田真由美に手を振り、小さな子は素直に彼の側に来て、恐る恐る機嫌を取るように言った。「パパ、真由美はダンスが好きじゃないの……」
彼女は話すとき目が泳ぎ、少し不安そうだった。
寺田真治は胸が不思議と痛んだ。「真由美、ママがダンスを習うのを禁止したの?」
寺田真由美はうなずいて、また首を振り、最後に頭を下げて不安そうに言った。「ママが言ったの、パパはダンスをする人が嫌いだから、ダンスを習わないでって。だからパパ、安心して。真由美はダンスを習わないから!」
この言葉に寺田真治の瞳孔が縮んだ。
寺田真由美が5歳になるまで、寺田真治はずっと子供の好みを知りたがっていた。しかし、子供の好きな食べ物や遊びが全て彼の好みと同じだということに気づいた。
彼はずっとこれが遺伝だと思っていた。
まさか全て堀口泉弥が育てたものだったとは。
寺田真治は顔を曇らせた。「パパはダンスが嫌いじゃないよ。」
寺田真由美の目がパッと輝いた。「じゃあ、真由美は木田先生にダンスを習ってもいい?」
寺田真治は彼女を見つめ、顎を引き締めた。「真由美は木田先生が好き?」
寺田真由美は恐る恐る笑った。「うん。」
彼女は頭を下げ、指をいじりながら言った。「木田先生のダンスはとても美しいの。私、こっそり何回か見たことがあるの。それに先生はいつも笑顔で、私は先生のことが大好き……でも、ママは木田先生のことが好きじゃない……」
ここまで言って、彼女は全体的に憂鬱そうになった。「それに木田先生も、真由美のことが好きじゃない。」