寺田凛奈のこの報告書を見て、寺田真治は息を止めた。ようやく理由が分かったのだ。長年寺田家を支配してきた人物が、今や頭を下げ、まるで悪いことをした子供のように慌てて説明し始めた。「叔父さん、私は…」
「パン!」
寺田亮は報告書を地面に投げつけ、すぐに目を固く閉じた。胸が激しく上下している。
彼のその様子を見て、寺田真治は非常に心配になり、再び一歩前に出た。「叔父さん、お見せしなかったのは、怒らせたくなかったからです。どうか落ち着いてください…」
寺田亮は何度も深呼吸をし、ようやく胸の中の怒りを抑えた。彼の指は軽く震えていた。「隠すべきではなかった。」
寺田真治はため息をついた。「叔父さんの体調を心配したからです。」
寺田亮は目を閉じた。「それでも隠す理由にはならない。」
寺田真治は恭しく頭を下げ、もう一言も発しなかった。
しばらくして、寺田亮が手を振った。寺田真治は彼を見つめ、病室を出た。
彼が出ていくと、寺田洵太が一歩前に出て尋ねた。「三叔父さんはどうですか?」
寺田真治は眉をひそめて彼を見た。
寺田洵太はすぐに手を振って言った。「そんな目で見ないでください。三叔父さんが報告書を欲しがったので、渡さないわけにはいきませんでした。」
寺田家がここまで来られたのは、すべて寺田亮の功績だった。
寺田亮の家での地位は、寺田真治の態度からも見て取れる。彼は長年表舞台から退いて権力を手放しているが、寺田家では誰一人として彼に不敬を働く者はいない。
なぜなら、皆が当時の寺田亮の手腕を知っているからだ。
寺田真治は深呼吸をした。「いいだろう。」
寺田洵太は責められなかったことに安堵した。
しばらくして、彼は突然尋ねた。「これからどうしますか?あの寺田凛奈を…家に迎え入れるのですか?」
寺田真治は眉をひそめ、不快そうに彼を見た。「三叔父さんの決定を待つんだ。今我々がすべきは、Antiを見つけることだ!」
「…はい。」
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寺田凛奈は寺田芽を連れて家に帰った。入ってすぐに上階に行って洗面を済ませ、寝る準備をしていると、寺田芽が黙って彼女のベッドに登り、真っ黒な大きな目で怨めしそうに彼女を見つめていた。