黒いSUVは大きくて威圧的で、そこに停まっていて目立っていた。
しかし、もっと目立っていたのは、車に無造作にもたれて、スマートフォンを見下ろしている人物だった。
寺田凛奈は全身黒い服を着て、だらしなくそこにもたれながら、海外の仕事に忙しく、自分がすでに美しい風景の一部になっていることにまったく気づいていなかった。
行き交う学生たちや、大学の門を通り過ぎる通行人たちは、みな彼女に目を留めていた。
真っ白な肌、すらりとしたくびれのある体型は、思わず振り返らせるほどだった。
小泉佐友理は彼女を見て、少し驚いた様子で言った。「凛奈姉さん?」
彼女の声を聞いて、寺田凛奈はようやくだるそうに顔を上げた。まず彼女の赤く腫れた目に目が留まり、ゆっくりとスマートフォンの文字を打ち終えて送信し、それからようやくためらいがちに尋ねた。「どうしたの?」
たった三つの言葉だが、小泉佐友理には親に会った子供のように感じられた。
彼女はもはや感情を抑えきれず、涙を流した。「凛奈姉さん、私、身分証明書と受験票をなくしてしまったの!」
寺田凛奈:?
今日が二次試験の日だと思い、様子を見に来たのに、こんな状況になるとは思ってもみなかった。
ここ数年、彼女は海外にいて、小泉佐友理の学業についてあまり知らなかった。
本来なら彼女自身の能力で大学院に合格してほしいと思っていたが、まさかこんなトラブルに遭うとは。身分証明書と受験票をなくすなんて、絶対に人為的なものだ。
小泉佐友理はこの言葉を言った後、全身の力が抜けたように、頭を垂れ、肩を落とした。来る前に、母親から凛奈姉さんに迷惑をかけないようにと言われていたので、ずっと我慢していた。
しかし今、もう我慢できなかった。凛奈姉さんに助けを求めたかった。裏口入学ではなく、試験のチャンスを得るための助けを。
この言葉がまだ口に出せないうちに、寺田凛奈が近づいてきて、彼女の傍らを通り過ぎながら言った。「ついてきて。」
冷たい三つの言葉だったが、小泉佐友理の目は赤くなった。
彼女は頭を垂れ、寺田凛奈の後ろについていった。