「お父さん?」寺田凛奈は驚いて、「どういうお父さんのこと?」
瀬戸門は堂々と言った。「芽のお父さんだよ。」
寺田凛奈はさらに混乱した。「彼が京都にいるの?」
当時、寺田凛奈について調査したときに、彼女が誰かと不倫をして婚前妊娠したと言われていた。石丸和久は彼女がそんな軽い女ではないと思っていたので、きっと誰かにだまされたのだろうと考えていた。
彼は無意識のうちに、芽のお父さんは悪い男だと思っていた。
今、彼が京都に来て彼女たちを探しているのだろうか?
考えている間に、寺田凛奈はすでに寺田芽の手を引いて出ていった。石丸和久は二人の後ろ姿を見ていた。
大きい方はだらしなく、両手を頭の後ろに置いて、歩くときは足を引きずっていた。
小さい方は自然に彼女の服の端を掴んで、ピョンピョン跳ねながら、ぴったりとついて歩いていた。
二人とも伝統的で正しい歩き方ではなかったが、その光景は不思議と調和がとれていて温かみがあった。
寺田凛奈が運転していたのは相変わらず家のGクラスだった。スマートに乗り込んだ後、寺田芽を後部座席に座らせ、自分もシートベルトを締めると、アクセルを踏んで車を発進させた。
彼女の運転は少し荒っぽかったが、寺田芽も怖がらなかった。
30分かかる道のりを、彼女は15分で走り抜けた。
藤本家には大きな邸宅があったが、藤本家の何代もの人々がそこに住んでいたと言われていた。そのため、藤本凜人は息子を連れて外に住んでいた。
門衛のところに到着すると、普段なら訪問者は登録をしなければならないが、彼女が減速するやいなや、門衛が口を開いた。「寺田さん、藤本さんからすでに連絡がありました。どうぞお入りください。」
寺田凛奈は眉を上げ、杏色の瞳に驚きの色が浮かんだ。藤本凜人がこんなに細かいところまで気を配るとは思っていなかった。
でも、そうだろう。彼のような高貴な天才が誕生日パーティーを開くのだから、人の出入りが多く、車の往来も激しいはずだ。きっと早くから来客リストを門衛に渡しているのだろう。
そうでなければ、一人一人登録して電話をかけるのは大変面倒くさいことになるだろう。
そう考えながら、彼女は車を運転して敷地内に入った。