高岡さんは表情を変えず、「三原御医だ」と言った。
寺田真治はすぐに人を遣わして呼びに行かせようとした。
しかし、高岡さんは彼を止めた。「彼はもう年老いて、今では少し混乱していて、ベッドから起き上がれない。だが、彼が内門の弟子を一人取ったと聞いた。その弟子は彼の真髄を受け継いだそうだが、残念ながらその人物は非常に神科的で、誰も居場所を知らないんだ」
寺田真治は眉をひそめ、ベッドに横たわる寺田亮に視線を落とした。
高岡さんはしばらく考えた後、再び口を開いた。「私は寺田さんの命をつなぎとめることはできる。しかし、あなたは彼に生きる希望を再び燃やさせるか、三原御医の直系の弟子を見つけるかのどちらかをしなければならない」
寺田真治はうなずき、桃の花のような目に厳しさが浮かんだ。「では高岡さん、できるだけ早く叔父を目覚めさせてください」
「わかりました」
高岡さんは銀針を取り出し、寺田亮の重要な経穴にいくつか刺した。そして、薬丸を一粒取り出し、砕いて彼の口に入れた。
一連の忙しい作業の後、寺田亮の脈拍が再び力強くなった。
高岡さんは冷や汗を拭い、寺田真治に言った。「寺田さんは明日目覚めるでしょう。これからは毎日、唯希に直接診察させます。あなたが三原御医の直系の弟子を見つけるまで、できる限り寺田さんの命をつなぎとめます」
寺田真治の顔に再び笑みが浮かんだ。「ありがとうございます。執事に案内させましょう」
二人が去った後。
突然、かわいらしい声が響いた。「お兄さん、彼はずっと前からお父さんを治せたのに、わざとここであれこれ言って、三原御医なんて言い出して、本当にでたらめだわ」
寺田真治はそれを聞いて笑った。
振り返ると、艶やかな姿が入ってきた。寺田亮の養女、寺田雅美だった。
寺田亮は生涯独身を通し、ただ一人の娘を養子に迎えた。寺田家の他の家系は全て息子ばかりだったので、この唯一の妹を大切に育てた。
寺田真治は淡々と口を開いた。「叔父の病気を治せるなら、彼の名声を上げてあげても何の問題もないだろう?」
寺田雅美は舌を出し、目を伏せた。
みんなは彼女を京都の寺田家のお姫様と呼んでいたが、実は誰も知らなかった。彼女が最も恐れているのは寺田真治だということを。