寺田健亮が眉をひそめたが、まだ何も言わないうちに、優しくも焦った声が聞こえてきた。「お兄さん、私を死なせる気?」
病床の上で、穏やかな中年女性が病院着を着て、ベッドから降りようともがいていた。彼女の髪の毛は全て剃られており、病気で痩せてしまい少し形相が変わっていた。頬はこけていたが、それでも彼女の優しさは消えていなかった。
彼女は寺田凛奈の叔母、寺田輝星だった。
寺田凛奈は急いで二、三歩進み、ベッドの端に座って彼女の手を握り、「叔母さん」と呼んだ。
寺田輝星は寺田凛奈をじっと見つめ、そして目に涙を浮かべた。「凛奈、痩せた姿が本当にお母さんに似ているわ。」
彼女は震える声で続けた。「こんなに長い間、外で苦労したのね。」
海外での5年間、寺田さんは彼女に1円も渡さなかったが、叔母はいつも生活費を送ってくれていた。
金額は多くなかったが、それは彼女の気持ちだった。
寺田凛奈の心に温かい感情が湧き上がった。
そのとき、継母の富樫和恵が口を開いた。「寺田凛奈、小さい頃から叔母さんはあなたに優しかったでしょう?今彼女が病気になって、あなたしか治せないのよ!彼女を死なせるつもりで、手を貸さないなんてことはないでしょう?」
寺田凛奈は眉をひそめた。
脳腫瘍...
彼女は近くに置いてあった診断書とCTを手に取り、真剣に見始めた。
富樫和恵はくどくどと話し始めた。「凛奈ちゃん、こういうことなの。叔母さんの手術はとても難しくて、ちょっとしたミスで脳を傷つけてしまう可能性があるの。だから今、病院で誰もやりたがらないのよ。この病院の脳科の秋田主任は、佐理菜の医科大学の先生だったから、彼女が頼んでくれれば、リスクを冒してやってくれるかもしれない。」
ここまで言って、富樫和恵はため息をついた。「でも今、臼井さんは会社がないと妹と婚約しないって言ってるの。妹はとてもつらくて、気分が悪いわ。でも悲しそうな顔で人に頼むわけにもいかないでしょう?だから、会社を妹にあげれば、佐理菜が秋田主任にお願いに行くわ。叔母さんの手術ができるかどうかは、全てあなた次第よ。」