彼が基地の総教官の名を持っているかどうかに関係なく、中村少華は去る決意を固めていた。国家と大御爺さんが出てこなければ、一歩も譲るつもりはなかった。
こんな場所に留まって何がいいのか。もし当初任務で離れていなかったら、楽はあんなに海外で苦労することもなかっただろう。
食事を終えた一行は、中村少華と中村静加がタクシーでホテルへ向かった。
林由綺は中村少華が座っていた場所を見つめ続け、瞳は深い思いを宿していた。
今回の出会いは予想外だったが、次に会えるのはいつになるのだろうか。
中村少華の答えは曖昧なものだったが、林由綺は彼が部隊に戻ってくることを強く願っていた。
風が吹いて、林由綺の耳を隠していた髪が揺れた。彼女は無意識に髪をかき上げ、少し変形した耳を再び隠した。
林由綺は少数民族の顔立ちで、目鼻立ちが深く、化粧をすれば間違いなく絶世の美女となるような存在だった。
しかし彼女は軍人で、常に冷たい表情を浮かべ、女性らしい柔らかさがなく、それが彼女をより孤高な存在にし、人々を遠ざけていた。
傍らの加藤茂林は林由綺を見て、彼女の心中が分かった。まして玲瓏の心を持つ中村少華ならなおさらだろう。
おそらく彼女に何の感情も抱いていないからこそ、無喜無悲でいられるのだろう。
タクシーに乗ってから、林由綺はまた尋ねた。「今ここには他の人がいないわ。次郎様に関するあの件について、今なら話せるでしょう?」
加藤茂林は選択的に知らんぷりをした。「何のことだ?」
林由綺はハンターが獲物を見つめるような鋭い目つきで加藤茂林を見据えた。「ごまかすのはやめて!」
「……」
加藤茂林は林由綺を横目で見て、言葉を失った。
次郎様が林由綺を好まない理由も分かる。どんな男も、こんな強気な女性は好まないだろう。
加藤茂林が林由綺を見下しているわけではない。ただ、中村少華のような男性が求めるパートナーは、決して林由綺のような女性ではないのだ。
「これが次郎様の耳に入ったら、良いことにはならないぞ」加藤茂林は心の中で中村少華の味方をしていた。林由綺を恐れることは一つだが、中村少華を敬重することは、また別の話だった。
林由綺の表情は険しくなり、霜のような口調で言った。「何だって?」