皆が見かねていた。
中村少華は苛立たしげに眉をひそめ、手を振って言った。「早くこの女を追い出せ。若様の機嫌を損なわせるな」
栗本放治の妹であり、国際的な女優でもあるため、大村部長も手を出せなかった。
一橋貴明は鋭く眉を上げ、冷たく大村部長を見つめた。「耳が聞こえないのか?」
大村部長は慌てて手を振った。「誰か、栗本お嬢さんを外へ案内してください」
「誰が私に触れるというの?」
栗本寧は冷たく叫び、顔色が凍りつくように変わり、突然銃を取り出して、引き金に指をかけ、彼女を外に案内しようとしたスタッフに向けた。
個室内で息を呑む音が響いた。
一橋貴明のわずかな忍耐も完全に消え失せ、瞳は血に飢えたように暗く冷たくなった。
松本旻は真剣な表情になり、急いで仲裁に入った。「栗本寧、落ち着いて、銃を下ろせ。不発の危険があるぞ、これは冗談じゃないんだ」
「心配しないで。私の手の中のこの銃より、七男の若様の銃で私を撃つ方が好きよ」
栗本寧は艶っぽく笑った。
それまで緊張していた雰囲気は、栗本寧のこの下ネタで一気に変わってしまった。
一橋貴明は薄い煙を吐き出しながら、冷笑した。「お前にその資格があるのか?」
そう言いながら、栗本放治に一瞥を送った。
これで、それまで黙っていた栗本放治は、一橋貴明がもう我慢の限界に達していることを悟った。このまま続けば、一橋貴明が激怒するかもしれない。
「栗本寧」
栗本放治は重々しく口を開いた。「もう馬鹿なことはやめろ。帰れ!」
栗本寧は結局、栗本放治の面子を立てることにした。それに、十分暴れたとも感じていた。
彼女はゆっくりと銃を収め、周りの軽蔑的な視線を無視し、深い眼差しで一橋貴明を見つめた。「貴明、私にあなたを完全に諦めさせたいなら、死ぬしかないわ!」
「さもなければ、自分で去勢しなさい!」
栗本寧はようやく立ち去ったが、皆が少し呆然としていた。
松本旻は目を瞬かせ、まだ呆然とした様子で、奇妙な目つきで栗本放治を見た。「栗本三男さん、お前の妹は何かショックでも受けたのか?」
彼らの記憶の中で、栗本寧は万人の寵愛を一身に受けて育った、お姫様病で、お嬢様気質が非常に強かった。