蘇言深が門を出ると、許昭がまだ車の中に座っているのに気づいた。
蘇言深が出てくるのを見て、許昭はすぐに車から降り、蘇言深に目配せをした。報告することがあるようだ。
蘇言深が久しぶりに見舞いに来たので、彼は邪魔をする勇気がなかった。
ここで待っているしかなかった。
蘇言深は足早に車に乗り込んだ。
許昭は車を発進させながら言った。「蘇社長、ネット上でフライブロエンターテイメントと章瀾のチャット記録が流出しました。章瀾がフライブロエンターテイメントに明さんと秦くんのトラブル動画を流出させるよう指示したんです。完全版は20分あるのに、バグで5分しか公開されませんでした」
ちょうどその5分の動画は秦くんがかわいそうに見える内容だった。
フライブロエンターテイメントと明霜の事務所は長期的な提携関係にあることを、蘇言深は知っていた。
彼は話しながら片手を空け、スマートフォンを開いて蘇言深に見せた。
連続した数枚の写真は、すべて章瀾とフライブロエンターテイメントのチャット記録だった。許昭が見せるからには、確実にフォトショップではないだろう。
章瀾はフライブロエンターテイメントに動画を公開させ、記事は明霜が新人に譲歩し、少しも威張らず、むしろ新人が寵愛を恃んで傲慢になり、白蓮花の演技で明霜をいじめたという内容にするよう指示していた。
スクリーンショットの視点はフライブロエンターテイメントのものだった。
蘇言深はチャット記録を見終わると、しばらく考えてから許昭に言った。「月の光に行こう」
許昭は「はい」と答えた。
……
今夜は誕生日の人が月の光で祝うために来て、多くの曲をリクエストしたので、俞晚晚はステージで20分以上遅れ、10時半になってようやく降りた。
すでに疲れ果てていた。
彼女がバーカウンターに行くと、周部長は両手で水の入ったグラスを差し出し、笑顔で迎えた。
これは最近、周部長が自分に課した仕事の一つで、宝物の女の子の世話をすることだった。
「ありがとうございます、周部長」
俞晚晚は周部長の前では自然な態度だった。