蘇言深は章瀾を見ることをやめ、明霜の怪我した膝を見て、「病院に連れて行こう」と言った。
そう言いながら、身をかがめて明霜を抱き上げようとした。
方可欣が来た。
「明せんせいを見せてもらいましょう。私は中医です」
彼女は自信満々に明霜の前まで歩み寄った。
明霜は悔しそうに眉をひそめ、瞳に冷たい光が一瞬きらめいた。
さっきもう少しで蘇言深に抱かれるところだったのに。
これは間違いなく秦くんというあの賤女の考えだ。
「あなた……」章瀾は乱暴に明霜の前に立ちはだかり、「我々の明さんは病院の医者に診てもらいます。あなたなんかが中医だなんて」
彼女の声と口調の勢いは随分と抑えられていた。
方可欣は二つ返事で携帯から中医の資格証を取り出した。「これが私の中医推拿の資格証です。秦さんは私が中医を学んだことを知っていて、明さんを診させてくれるよう頼んできました。治療が遅れるのを心配したんです」
中医の資格証には確かに彼女の情報と写真が載っていた。
蘇言深はその資格証を見て、しばらく黙考してから口を開いた。「彼女に診てもらおう」
彼は俞晚晚が公然と何か小細工をして明霜を傷つけるようなことはしないだろうと考えた。
明霜は蘇言深が方可欣に診てもらうことに同意するとは思わず、腹立たしげに椅子の肘掛けをきつく掴んだ。
目の前でしゃがんでいる方可欣を蹴飛ばしたい衝動に駆られた。
方可欣はしゃがみ込んで、とても丁寧に、細心の注意を払って明霜の怪我の箇所を診察した。
診察が終わると、彼女は言った。「明さん、これは大丈夫です。ただ皮膚が擦れただけです。赤くなっているのは手で熱く揉んだせいでしょう」
そう言って彼女は立ち上がった。
明霜は眉をひそめ、怒りを込めた鋭い声で言った。「どういう意味?」
態度の悪さに気づき、すぐに感情を抑えた。
委屈そうな表情を浮かべる。
方可欣は肩をすくめた。「転んで痛いと、最初の反応は揉むものですよ。明せんせい、私がどういう意味だと思ったんですか?」
この反問に、逆に明霜は心虚になった。
彼女は章瀾に目配せした。