最終的な結果は、相手側が直接私的に和解することに同意し、裁判所という言葉は口にすら出せなくなった。
寧夕は完全に困惑していた。陳弁護士は先ほどスキルのクールダウン中で、気力値を貯めて必殺技を放つのを待っていたのか?
常莉は彼女以上に困惑していた。
同じように困惑したのは向かい側の3人の弁護士たちだった。
寧夕と陳弁護士が立ち上がって退室しようとしたとき、向かい側の寧家の弁護士である蔡英勇が突然興奮して立ち上がり、疑惑の表情で陳弁護士を見つめながら尋ねた。「ちょっと待ってください!失礼ですが!あなたは...陳競陳弁護士ではありませんか?」
隣の2人の弁護士はこの言葉を聞いて驚いた。「なんだって...陳競?どの陳競?まさか...陳弁護士じゃないだろうな!」
彼らは先ほど寧夕が連れてきたこの無口な弁護士を全く眼中に入れていなかったので、彼の身元も聞いていなかった。しかし今になって考えると、どうもおかしい。
彼らは陳競本人に会ったことはなかったが、彼の仕事ぶりについては耳にしていた。
普段は寡黙で言葉少なで、知らない人は彼が口がきけないのかと思うほどだが、いったん仕事を始めると、まるで狂乱モードに入ったかのように、話すスピードが速く、論理が明確で、一言一言が刃物のように鋭く、戦闘力が爆発的に高まる...
陳弁護士は蔡英勇に返事をせず、足を止めることもなく、そのまま会議室を出て行った。
背後で。
常莉は顔面蒼白になり、椅子に崩れ落ちた。
終わった!
寧雪落は何度も何度も寧夕との契約解除を許さないよう言い聞かせていたのに、今や全てが台無しになってしまった。
寧夕が依頼した弁護士は帝都ランキング1位の金メダル弁護士である陳弁護士だったのか?
なぜ陳弁護士がわざわざ寧夕のためにこんな小さな契約解除の交渉に来たのだろう?
この弁護士は分単位で料金を請求し、依頼するのは天価だというのに!
もしかして...もしかして寧夕のスポンサーはこの陳弁護士なのか?
...
寧夕はスターライトビルを出ても、まだ現実感がなかった。一見無口で無表情に見えたこの弁護士がこんなに凄腕だとは思いもよらなかった。
盛世エンターテインメントの法務部の弁護士は皆こんなに凄いのだろうか?