心の奥底がぎゅっと揺れ、蘇千瓷は顔を真っ赤にして、すぐに彼の手を払いのけようとした。慌てて言った。「い...いいえ、自分で行けますから。離してください。」
「恥ずかしがることはないよ。君の体のどこも見たことがあるんだから!」そう言いながら、彼は容赦なく彼女をベッドから抱き上げた。
蘇千瓷は驚いて、呆然と尋ねた。「あ...あなた、何をするの?」
またこの表情。まるで驚いた小鹿ちゃんのようだ。
厲司承の胸の奥で何かがほんの少し柔らかくなった。表情は相変わらず冷たく沈んでいたが、真面目な顔で言った。「何を恐れているんだ?何もしないよ。」
蘇千瓷の顔はさらに赤くなり、うつむいて言った。「あなた...私...」
厲司承は少し困ったような様子で、漆黒の瞳の中に微かな輝きが見えた。機嫌がよさそうだ。「トイレに行くんじゃなかったのか?」
そう言うと、蘇千瓷を抱えたままトイレの方向へ歩き出した。
蘇千瓷は心の底から驚いた。まさか、彼が自分をトイレに連れて行くなんて...
でも...恥ずかしすぎる...うわぁぁぁ...
トイレの入り口に着いても、厲司承は彼女を降ろす気配がない。蘇千瓷は慌てて制止した。「ちょ、ちょっと待って。ここで降ろしてくれればいいわ。トイレくらい自分でできるから、あなたは...先に出ていって...」
「わかった。」厲司承はこれ以上主張せず、蘇千瓷は赤面しながらトイレの中に入った。最後に彼を見たとき、
彼の顔に、かすかな笑みが浮かんでいるのを見た気がした。
彼が...笑った?
えっ、幻覚?
厲司承のような人が、笑うなんて?
でも、それはほんの一瞬のことだった。
蘇千瓷がもう一度よく見たときには、彼の目の奥にあったわずかな笑みは既に消えていて、まるで最初からなかったかのようだった。
厲司承は彼女がまだ自分を見ていることに気づき、眉を上げて尋ねた。「手伝いが必要か?」
蘇千瓷は「ぞわっ」と背筋が震え、顔が真っ赤になった。急いで二文字だけ答えた。「いいえ!」
トイレのドアが「バタン」と閉まり、鍵がかけられた。一連の動作が素早く行われた。
厲司承の唇に微笑みが浮かび、珍しく気分が良さそうだった。彼は身を翻すと、部屋を出て行った。