「松川門のための契約ですか？」
寺田凛奈は眉をひそめ、彼の手にある書類を見た。
高岡悠彦は冷笑した。「ああ、言い忘れていました。レーシングクラブはもうすぐ松川門のものになります。我々松川門は心からあなたを我々のチームにお招きしたいのです。Yanciがいれば、いつだって我々のチームは勝てると思いますよ！」
寺田凛奈：？
彼女は眉をひそめ、理解できずに尋ねた。「篠崎冠介が同意したんですか？」
高岡悠彦は口を開いた。「もちろんです。」
彼は目をきらめかせ、そして言った。「もし彼が同意していなければ、私がこんなことをする勇気があると思いますか？」
寺田凛奈は彼らの間でどんな取引があったのかは気にしなかったが、臼井陽一を使って彼女を脅すことは？
彼女は冷ややかに目を伏せた。「あなたたちのクラブには興味ありません。」
そう言って、まっすぐに臼井陽一の方へ歩き始めた。彼女は無駄な言葉を費やすつもりはなく、人を救ったらすぐに立ち去るつもりだった。
しかし、まだ歩き出していないうちに、高岡悠彦が再び彼女の前に立ちはだかった。「寺田さん、あなたが海外でレースをしていたときは自由だったのはわかります。でも国内では、レース業界で生きていくには、バックがないと無理なんです。以前、渡辺光祐だって篠崎冠介を頼りにしていたじゃないですか？あなたが我々松川門と組めば、以前よりもっと良くなりますよ！松川門の後ろ盾が誰か知っていますか？」
寺田凛奈はまだ目を伏せたまま。「興味ありません。」
「……」高岡悠彦は焦った。「松川門の後ろ盾は瀬戸門なんです！瀬戸門武館、聞いたことがあるでしょう？江湖で名高い存在ですよ！この契約さえ結んでくれれば、今後京都で何があっても、松川門と瀬戸門があなたの後ろ盾になります！」
寺田凛奈は呆然とした。「瀬戸門？」
高岡悠彦は彼女のこの態度を見て安堵の息をついた。「そうです、瀬戸門！松川兄貴は瀬戸門の外門弟子なんです。これは誰もが知っていることで、篠崎冠介が松川兄貴に手を出せないのも、瀬戸門があるからなんです。」
寺田凛奈：「……」
何がなんだか訳がわからない。
瀬戸門の外門弟子が、外でこんなに横柄なものなの？
