寺田凛奈は彼を無視して、直接入り口の方向へ歩いていった。
渡辺光祐:?
彼は少し驚いて、歩み寄って尋ねた。「チケットあるの?」
寺田凛奈は無造作に答えた。「うん。」
渡辺光祐はほっとした。「よかった。じゃあ、君は列に並んで入場して。僕はレーサーの方に行くよ。」
レーサーと観客は異なる入り口から入場する。こちらはまだ列に並ぶ必要があった。寺田凛奈は手を振った。「行ってきて。」
渡辺光祐はレーサー用の通路へ向かい、直接バックステージに入ってウォーミングアップの準備を始めた。
寺田凛奈は藤本建吾の手を引いて、ゆっくりと列に並んだ。
彼女は物憂げにあくびをした。
チケットのような些細なことは、もちろん彼女は持っていた。
Yanciとして、このような入場券が欲しければ、一言で済むことじゃない?
それに、早くから人々が進んでチケットを届けてくれていた。
しかし、長い間運転していなかったので、手が少し痒い。彼らのレースが終わった後、篠崎冠介に頼んで2周ほど走らせてもらえないかな。
彼女が考え込んでいる間、隣に立っている藤本建吾は頭を下げて寺田芽にLINEを送っていた。【どこまで来た?】
芽ちゃんはすぐに返信した。【もうすぐ着くよ!】
藤本建吾は安心した。【後でバレないようにね。】
【大丈夫だよ!お兄ちゃん安心して!寺田芽は完璧にやり遂げるよ!】
藤本建吾:……
彼がもう少し注意を促そうとしたとき、突然隣から2人の子供たちが走ってきて、彼の腕にぶつかった。
藤本建吾が振り向くと、なんと寺田保裕と寺田真由美だった。
2人の子供たちも藤本建吾をここで見かけるとは思っていなかったようで、興奮して叫んだ。「芽ちゃん!」
藤本建吾:「……」
彼は今日中性的な服装をしていて、女の子と間違われたくなかったのに、この名前を聞いて周りの人は彼の性別を知ってしまったんじゃないだろうか。
彼は少し黙ってから尋ねた。「君たち、ここで何してるの?」
寺田真由美は恥ずかしそうに寺田保裕を見てから口を開いた。「レース見に来たの!寺田保裕がレースカーはとても面白いって言ったから。」
面白いって……