松川文弥は武道場の方向に二歩歩いたところで、小出佑一に止められた。「師弟よ、師匠の武道場には外門弟子は入れないんだ。この規則は破れないよ」
瀬戸門で武功を学ぶのは内門弟子だけで、外門弟子には伝えない。
そして、すべての内門弟子が内門の功法を練習する時は、武道場で行わなければならない。松川文弥は何度も武道場に行こうとしたが、それは瀬戸門の内門の功法を見たいだけだった。
小出佑一に止められた後、彼は大笑いをして自分の頭を叩いた。「ほら見ろ、忙しくなると規則を忘れちまうんだ。わかった、じゃあ外で座ってお茶でも飲んでるよ！」
小出佑一は頷き、二人は外で2時間ほど世間話をした後、松川文弥はようやく大笑いしながら去っていった。
松川文弥は家に帰らず、篠崎家に向かった。
この時、篠崎冠介はジムで筋トレをしていた。ダンベルを持ち上げるたびに、その腕には恐ろしげな筋肉の模様が浮かび上がり、見ているだけで怖かった。
松川文弥が入ってきたとき、彼の逞しい体つきを見て、少し驚いた。
実際、一対一の戦いなら、彼は篠崎冠介に勝てないかもしれない。結局のところ、彼が学んだ瀬戸門の武術は、ただの見せかけに過ぎなかったからだ。
しかし、それは松川門を拡大する妨げにはならなかった。
松川文弥は笑いながら口を開いた。「篠崎、連絡もせずに来てしまって申し訳ない！」
篠崎冠介は大雑把な男で、松川文弥のような社交辞令が最も嫌いだった。すぐにダンベルを置き、自分の腕を叩きながら、耳をつんざくような声で叫んだ。「松川兄貴、俺に何の用だ？」
松川文弥は近寄って座り、そして口を開いた。「篠崎、君と商売の話をしに来たんだ」
篠崎家と松川門は宿敵で、二つの勢力圏も違う。どんな商売が交わりうるのだろうか？
篠崎冠介は目を細めて、ミネラルウォーターのボトルを手に取り、頭からかぶった。体から出た冷や汗を流し、ようやく楽になった。「俺たちに何の商売があるんだ？」
松川文弥は笑った。「こういうことだ。君のスーパーカークラブは今経営不振だろう？我々松川門が金を出して買い取りたいんだ。どうだろう？」
