石丸惇人はまた彼女の袖を引っ張った。「芽ちゃん、女の子は男の子になれないよ。絶対に負けちゃうから、彼の言うことを聞かないで!」
寺田芽は甘い声で言った。「私には方法があるの!」
寺田保裕は髪をさわりながら、もう一度鼻を鳴らして、両手をポケットに入れて歩き去った。
彼が去った後、福山曜花は寺田芽の前に駆け寄り、顎を上げて言った。「寺田実依、お前は終わりだ!保裕に目をつけられたら、これからお前の人生は地獄だぞ!彼は子分に犬の鳴き真似をさせるのが大好きなんだ。明日からお前は犬芽だ!」
災難を喜んでいる最中、寺田芽の大きなブドウのような目に疑問の色が浮かんだ。「でも、どうやって犬の鳴き真似をするの?」
福山曜花はすぐに身を屈め、両手で爪を作るようなポーズをとって、「ワン~ワン~ワン~」
そして彼女は体を起こした。「こんな感じよ!」
寺田芽:「どんな感じ?」
福山曜花は眉をひそめ、叱りつけた。「なんでこんなに馬鹿なの!」
そしてまたポーズをとって、犬の鳴き真似をした。「ワン~ワン~ワン~ワン~」
寺田芽は口を大きく開けて笑った。「あ、あなたがグーシーシーだったんだね!」
福山曜花:「……」
からかわれたことに気づいた彼女は、またも「わーん」と泣き出した。
「……」
一日の授業はすぐに終わり、午後になると、保護者たちが次々と子供たちを迎えに来た。
寺田芽が外に出たとき、木田柚凪のゴッドマザーが来ていることがわかった。ママはきっとサボっているに違いない。外に出ると、案の定、木田柚凪のゴッドマザーがそこに立っていた。
彼女はぴょんぴょん跳びながら近づき、木田柚凪と一緒に車に乗って家に帰った。
渡辺家。
幼稚園では一日三食提供されるため、下校時には夕食を済ませている寺田芽は、帰宅後は通常食事をしない。そのため、他の人が食事をしているとき、彼女はこっそり2階に隠れて、お兄ちゃんの建吾とビデオ通話をした。
ビデオ通話が繋がるとすぐに、お兄ちゃんの顔を見た瞬間、寺田芽は甘く微笑んだ。「お兄ちゃん、会いたかったよ!」
藤本建吾は真剣な顔で宿題をしていて、背景は彼の書斎だった。
彼はイヤホンを耳に当て、そして口を開いた。「うん、僕も芽とママに会いたかったよ~」