リリの言葉を聞いて、寺田凛奈は少し驚いた。
DNAの再検査をする前に、自分が寺田健亮の娘ではないかもしれないという心の準備はできていたが...実際にその事実が目の前に突きつけられると、少し驚いたものの、それ以上に安堵感を覚えた。
寺田凛奈はアーモンド形の瞳を伏せ、窓越しに外を見つめた。
心の中に突然、何かが晴れ渡るような感覚が生まれた。
親を慕うのは人間の本能だ。
母親は早くに亡くなり、この世界で唯一の肉親は父親だった。しかし、幼い頃から父親に抱かれたことも、キスされたことも一度もなかった。
時々、寺田健亮が寺田佐理菜を抱きしめて親しげにしている姿を見ると、とても羨ましく思ったものだ。
そのころ、一時期ひどく引きこもりがちになったこともあった。
幼い彼女は、心の中で「自分があまりにも人に好かれない存在だから、お父さんに嫌われているのかもしれない」と考えずにはいられなかった。
その後、彼女は心を閉ざし、二度と外に向かって開くことはなかった。
彼女を知る人は皆、彼女が薄情だと言う。それは、愛し方を教えてくれる人が誰もいなかったからだ。
彼女の世界には、常に自分一人しかいなかった。
しかし、結局のところ、最初から最後まで彼女の過ちではなかったのだ。寺田健亮が彼女を好きではなかったのは、彼女が十分に人に好かれる存在ではなかったからではなく、彼が彼女の実の父親ではなかったからだった。
寺田凛奈はアーモンド形の瞳を上げ、突然、先ほど富樫和恵と寺田健亮を見送る際に寺田健亮の髪の毛から抜き取った髪の毛を見下ろし、唇を歪めて笑った。「じゃあ、全部調べてみましょうか」
既に確信はあったが、念のため寺田健亮とも比較しておいた方がいいだろう。
リリは彼女の焦る気持ちを察したのか、こう答えた。「分かりました。今すぐ取りに行くよう手配します」
最速の宅配便でも、人が直接走るほど速くはない。
そして、国内でDNA検査をしないのは、彼女のいつもの流儀だった。
10分後、髪の毛のサンプルを取りに来た人がいて、その夜のうちに最寄りの便に乗り、M国へ直行した。10時間後、サンプルはすでにリリの手元にあった。
彼女は不眠不休で、さらに4時間かけてDNA検査の結果を出した!
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