寺田真治の足が突然止まり、桃の花のような目に驚きの色が浮かんだ。
藤本凜人と寺田凛奈が一緒に?
二人はどういう関係なんだ?
突然、中にいる人が外の動きに気づいたようで、藤本凜人の鋭い視線がガラス窓を通して外を見た。
寺田真治はすぐに一歩後ろに下がり、横に隠れた。もう中の様子を見ることはなかったが、激しい物音が聞こえてきた。壁にぶつかる音や、肉体がぶつかる鈍い呻き声、その間に息遣いも混じっていた……
この激しい音に、寺田真治は顔を赤らめながら聞き入った。
彼はもう一歩後ろに下がり、こっそりと立ち去った。
見つかったら恥ずかしいと思ったようだ。
この子供には不適切な音は、5年前に木田柚凪と一緒にいた時の場面を思い出させた。堀口泉弥については、ある晩酔っ払って、ベッドの人が木田柚凪だと思っていたのに、目が覚めたら堀口泉弥に変わっていた……
彼の記憶の中では、堀口泉弥と寝たことは一度もなかった。
以前もなかったし、この5年間はなおさらない。
寺田真治は前の病室には行かず、寺田亮の病室に戻った。
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階段の踊り場。
寺田凛奈の足が遮られ、拳が使える状況になった。藤本凜人の隙を捉え、彼の左肩に一発パンチを打ち込んだ。
攻撃が成功すると、もう戦いを続けず一歩後退して距離を取り、冷たく言った。「藤本社長、距離を保ってください。」
藤本凜人は自分の肩を押さえ、かなり強く殴られたようで、苦笑いを浮かべた。「寺田さん、最初に近づいてきたのはあなたですよ……」
寺田凛奈はまだ顔を引き締め、杏のような目に鋭さと怒りの霞がかかっていた。耳先の肌が少し赤くなっていた。
彼女はさっき藤本凜人に少し懲らしめを与えようと思っただけだった。誰が知っていただろう、話し終わって彼を離したとたん、彼が手を伸ばして彼女の腰を押さえ、前に引き寄せ、そして頭を下げて彼女にキスした……キスした……
本当にひどい!
寺田凛奈は次の瞬間、拳を振り上げたが、残念ながらこの男は逃げようとした。二人は10分間も戦い、やっと隙を見つけて彼を打ち、仇を返した。