「前回?」
寺田凛奈は再び眉を上げた。彼女は藤本奥様の手術をした前回のことを覚えていなかった。
今泉唯希は彼女のその様子を見て、眉をひそめた。「あなた、本当にそんなに欲張りなの?Antiの手術を見る人が違えば、異なる感想や学びがあるって聞いたわ。寺田さん、そういう機会は他の人にも譲るべきよ。」
彼女が話している間、加納主任の助手が近づいてくるのを目の端で捉えると、態度を変えた。高慢な態度から普段のような優しい様子に変わり、ため息をついた。「もちろん、私は自分の資格を主張しているわけじゃないわ。私はもう手術室に入る資格があるもの。ただ、寺田さんがこういったことで加納主任に迷惑をかけるべきじゃないと思って。私たちが手術室に入れるのは厳選された結果なのよ。あなたがこうして入れば、入れない人が出てくる……」
この言葉は確かに近づいてきた人の共感を呼んだ。
一つの手術に、全員が参加できるわけではない。一人多く入れば、大学では一人少なく入れなくなる。そして、間近で見学して学ぶのと、録画を見るのとでは感覚が全く違う。
その助手は博士課程の学生で、卒業後はそのまま大学に残って教授兼病院の特任主任医師になれる人物だった。加納主任の最も得意とする弟子で、秋田信三という名前だった。
彼は心の中で口をとがらせ、少し不機嫌そうに言った。「加納主任があなたを案内するように言われました。」
この状況を見て、今泉唯希は眉をひそめた。
寺田凛奈は一体誰のコネを使ったのか、加納主任がこれほど丁重に扱うなんて……しかも最も信頼する助手を直接派遣して迎えに来させるなんて。
渡辺家にはそんな力はない。藤本家かしら?
今泉唯希は頭を下げ、二人の後ろについて行った。
寺田凛奈が会議室に入ると、加納主任が数人の専門家と協議しているのが見えた。今泉唯希のレベルの医師は末席に座って彼らの議論を聞くことしかできない。
しかし寺田凛奈が入るや否や、加納主任は立ち上がった。「寺田さん、来られましたか?」
そう言って自分の席を譲ろうとした。
寺田凛奈は手を振った。「座っていてください。」