すぐに、ウェイターが料理を運んできた。
イタリアンレストランなのに、なぜか小皿で料理を出してきた。一皿、また一皿と小さな皿が並び、寺田凛奈は目を見開いた。
これは何なんだ?
彼女は退屈そうに箸を持ち、ゆっくりと食べ始めた。
対面に座る藤本凜人はゆっくりと口角を上げ、口を開いた。「寺田さん、食事は良く噛んでゆっくり食べるべきです。早すぎると体に良くありません。」
「……」
でも、こんなにゆっくりじゃなくてもいいでしょう!
ある皿には、きゅうりが2本だけ……
凛奈は、藤本凜人が故意にこうしているのではないかと疑った。到着した時、ロビーで食事をしていた人たちの皿は普通のサイズだったのだから。
彼女は箸を持ち、ボウルの中のパスタを少しつついて、適当に口に運んだ。
藤本凜人は彼女が退屈そうなのを見て、話題を変えた。「寺田さんはどうして、将来の不動産開発があまり良くないと分かったのですか?」
凛奈はパスタを飲み込んでから、野菜サラダを一切れ挟み、そして口を開いた。「藤本さんが教えてくれたんじゃないですか?」
藤本凜人は眉を上げた。すると彼女は続けて言った。「福山家が最初に藤本家に協力を求めたけど、藤本家が断ったと聞きました。」
藤本凜人は低く笑った。「でも、外では皆、私が息子のことで機嫌が悪いからだと言っていますよ。」
凛奈はアーモンド型の目をぱちくりさせ、片手でテーブルを支えながら、もう片方の手でだらしなく野菜を口に運んだ。「うーん、藤本さんが気分で商売をしているなら、藤本グループは今日まで来られなかったでしょう。あなたのビジネスの目は常に優れています。」
「……」
藤本凜人は幼い頃から褒められ続けてきた。皆が彼をビジネスの天才と呼んでいたが、彼はそういった賞賛を気にしたことはなかった。
しかし、この女性に軽々しく「目が常に優れている」と言われ、彼は心が特別に楽しくなるのを感じた。
彼は何気なくテーブルの横にあるリンゴジュースを手に取り、一口飲んで笑みを隠した。顔を上げると、凛奈が驚いた様子で彼を見つめているのに気づいた。「藤本さん、あなたが飲んでいるのは、私のジュースです。」