寺田凛奈は石丸和久に言った。「おばさん、この幼稚園に決めましょう。私が芽を連れて試してみます。」
そして立ち上がって出て行き、電話に出た。
電話から年老いた厳格な声が聞こえてきた。「どこにいる?」
彼女の漢方医学の先生、三原御医だった。
この人の真面目で厳格な性格を思い出し、寺田凛奈は思わず背筋を伸ばした。「先生、私は京都にいます。どうしたんですか?」
三原御医はゆっくりと口を開いた。「ああ、寺田家があなたを探しているよ。病気を診てほしいそうだ。」
寺田家、寺田亮?
寺田凛奈が行くと言おうとした時、三原御医が口を開いた。「行く必要はない。彼は病気ではない、ただ生きる気力を失っているだけだ。」
「……」
「体の器官が衰弱している。今はあなたの莫愁丸で命をつないでいる。たとえあなたが行っても、彼に生きる意志を持たせることができるのか?」
寺田凛奈:「……」私を見たら、寺田亮はますます生きたくなくなるでしょうね。
彼女は心の中でため息をつき、慎重に尋ねた。「分かりました、先生。明日お会いしに行ってもいいですか?」
三原御医は今年すでに90歳を過ぎているが、老人の発音は明瞭だった。「必要ない。年を取ったから、会う価値はない。私の漢方医学を受け継いでくれれば、それが私への最大の恩返しだ。」
老人の冷淡さに、寺田凛奈の杏色の目に涙が光った。
彼がいなければ、自分はとっくに何度も死んでいただろうか?
彼女は目を伏せた。「では、先生が会いたくなったら、必ず教えてください。」
「もう子供じゃないんだから、こんなにべたべたくっついて、どうするんだ!」三原御医はそう言った後、もう一言付け加えた。「切るぞ。」
「ツーツーツー……」
寺田凛奈は携帯電話を見つめ、軽くため息をついた。このおじいさんは相変わらず変な性格だ。
一夜明けて。
翌日の朝、寺田芽が目覚めた時、寺田凛奈はまだ寝ていた。
彼女はつま先立ちで、カーペットの上を軽やかに歩き、書斎に入ると、ドアを閉めた。
そして、携帯電話を取り出し、藤本悠佑にメッセージを送った。「悠佑、準備できた?」