二人は時間と場所を決めた。
電話を切る頃には、寺田芽が走ってきた。彼女は大きな目をぱっちりと開いて言った。「ママ、明日本当に私をパパと一緒に食事に連れて行くの?」
寺田凛奈は彼女の頭を撫でながら、淡々とした口調で言った。「あなたはまだ学校に行かなきゃいけないのよ。何の食事?」
「……」寺田芽の頭がしょんぼりと下がった。「やっぱり!」
寺田凛奈の目に悪戯っぽい光が走った。
藤本幸大は毎週火曜日と金曜日に瀬戸門に授業を受けに行き、それ以外の日は家で勉強している。彼女は息子に会っていない日が3日も経っていた。
翌日、寺田凛奈は芽を幼稚園に送った。
車はいつものように路側に停まり、彼女は寺田芽の手を引いて門まで送り、そこには既に先生が待っていた。
寺田芽は幼稚園特製の制服を着て、大きなリュックを背負っていた。小さな体がとてもかわいらしかった。
先生が先に出迎えた。「寺田実依ちゃんですね?Aクラスですよ。私があなたの先生です。一緒に入りましょうか?」
寺田芽がうきうきしながら走り込もうとしたとき、肩を寺田凛奈に押さえられた。「先生、ちょっと言い聞かせますので」
先生はうなずき、慣れた様子だった。
通常、初めて子供を幼稚園に送る親は別れを惜しみ、「いじめられたら先生に言うのよ」とか「泣かないで、ママが時間通りに迎えに来るから」などと子供に言い聞かせる。
そう思った矢先、目の前の女性がクールに注意した。「他の子をいじめちゃダメ、泣くふりをしちゃダメ、そして先生をいじめちゃダメよ。わかった?」
先生:???
さっきまで上機嫌だった小さな友達を見ると、今や背筋を伸ばし、小さな虎歯を見せて笑った。「ママ、芽は先生とお友達をちゃんと世話するよ〜安心して!」
先生は背筋が寒くなり、突然この新入園児が小さなお姫様ではなく、小さな悪魔のように感じた。
寺田芽が先生に手を引かれて幼稚園に向かって跳ねながら歩いていくのを見守った。まだ教室棟の入り口に到達する前に、寺田芽が何かを言うと、その先生はすでに笑い出し、彼女を抱き上げて教室に連れて行った。
寺田凛奈:「……」