Chereads / 死霊魔道士はただ木を植えたいだけです / Chapter 3 - 002 ネクロマンシー:ボーンドラゴン_1

Chapter 3 - 002 ネクロマンシー:ボーンドラゴン_1

……

翌日。

マシューは明け方に起きた。

今日は土曜日。

彼は昼間、シービル公立学校へ行く必要はない。

これは最後のタスクを終わらせるのにちょうど良い時間だ。

彼は温室からいくつかの苗木の袋を運び出し、あわただしく家を出た。

ペギーの meticulouslyは確かに念入りだ。

彼女は植え付けに必要な全てのアイテムだけでなく、苗木の袋の隣の棚には食事のボックスと水袋も置いていたーこれは彼女がマシューが今日は一日中働くだろうこと、そして彼がおそらくキッチンで食べ物を取るのを忘れるだろうことを予想していたということだ。

これほどの細心さは、低レベルの不死の生物にとっては奇跡とも言える。

時折マシューは、ペギーに自分の代わりに木を植えさせても良いかもしれないと思う。

しかし、彼はそれをただ考えるだけだった。

ローリングストーンズタウン は、魔法が完全に失われた孤立した場所ではなく、アインドウ世界での死霊魔道士の立場はまだ大衆の攻撃の対象にはなっていないが、歩き回るスカルは常に奇妙な視線を引き付けるだろう。

ましてやペギーが死んだミノタウロスから変貌した珍しいスカルであることを言うまでもない。

'スカルツリープランティング'といった奇妙な事態は、ローリングストーンズタウンのような小さな町では必ず何かしらの批判を引き起こすだろう。

考えただけでも面倒だ。

……

オークウッドの北。

マシューはしっかりと前方の土地を見つめて歩いていた。

彼は苗木たちのために場所を探していた。

木を植えることは決して簡単なことではないー

選択する種類;

芽吹き;

基本的な土壌の組成;

温室での定植;

植樹用の穴の場所;

移植と管理;

……

この一連の手続きは、過去3年間でマシューは心に刻み込まれた。

だが問題は、現場でいつも色々な困難が生じることだ。

例えば今、マシューは苗木と道具を用意してまったく問題ないのに、場所が決まらず、工事が進行しない。

「ローリングストーンズタウンは木を植えるには良い場所ではない」

西から漂ってくる黒煙を見ながら。

マシューはそう感嘆した。

採掘者の盆地は様々な鉱山で知られており、この土地は人間やドッグヘッドによって何度も掘り返され、その大部分が植物にとっては適していない。

人為的な汚染はまだしも。

それ以上に恐ろしいのは北方に広がるその大きな傷跡だ!

マシューはある土丘の頂上に立ち、北方を見渡した。

「また近づいてきた」

彼は複雑な表情で北方からじわじわと広がる黒い傷跡を見つめた。

……

「死者の痕跡」

……

それは多年前の天災がこの大地に刻んだ傷跡だ。

それはジェム湾から始まり、翠玉苍庭と永遠の歌の森を通り、人類王国のデュークの土地と採掘者の盆地まで続いている。

死者の痕跡の近く。

生命は絶滅している。

そこでは、アンデッドさえ生存が困難だ。

それは最も純粋で、最も獰猛な消滅の力だ。

凡人は敵わない。

……

「この世界はゲームの世界と多くの点で似ているが、違うところもある。ゲームの世界には死者の痕跡もなければ、ローリングストーンズタウンや翠玉苍庭の存在もないー同じ宇宙でも、位相が違うのだろうか?」

……

視線を戻す。

マシューは丘を下りた。

彼の背後には着実に形を持つようになってきているオークの森、その前には荒れ果てた土地が広がり、オークの森の裏には赤い屋根つきの黄色いレンガのローリングストーンズタウンがあった。

三つのエリアは明確に分かれている。

マシューは時々、システムが発行した任務が死者の痕跡と関係があるのではないかと思う。

なぜなら、彼がオークの森を見れば見るほど、それが死者の痕跡の前に立ちはだかる盾のように思えるからだ。

残念ながら。

「ただのオークの森だけでは、死者の痕跡の広がりは防げない。」

彼は何気なくそう考えた。

……

マシューは村のふもとを一周、大きく回った。

やっといくつかの適した穴場を見つけることができた。

ここは彼の計画範囲を超えているが、死者の痕跡からもまだ距離があるので、植えたオークの苗木が生きていけなくなることはないだろう。

体力と力の限界から、マシューの作業はスピードが早いとは言えないが、経験が豊富な分、効率は良い。

彼は一定のリズムと速度を保つ。

日が頂点に達するまで。

麻袋の中の苗木は全て山腹の下に安全に置かれた。

マシューは汗を拭い、胸から緑色の液体の入ったビンを一本取り出し、それを一本ずつオークの苗木に注いだ。

これは彼がガーディアン高地のドルイドから高額で買い取った「グロースグリーンリキッド」で、植物の成長を促進し、強化する効果があり、長期的に使い続ければ、1年間で20年分の自然な成長を得ることができる。

残念ながら、これがマシューの最後の一瓶だった。

この三年間。

マシューはほぼすべての貯金を木を植えるという大事業に投じてきた。

そして、ついに収穫の時が来たのだ。

彼の手は微かに震えていた。

ぷっ。

一滴一滴の緑色の液体が落ちる。

ばっさり落ちていた苗木は一瞬で直立した!

その瞬間。

マシューの目も輝きを持ち始めた。

……

「5本のオークを成功裏に植え付けました。あなたの自然親和度がわずかに向上しました」

植え付けて成長したオークの総数:1001

……

「主要任務:樹木の植栽」の初級目標を達成しました。

報酬として「ネクロマンシーサモン(ボーンドラゴン)」と「大量のXP」を獲得しました!

……

あなたのレベルが8レベルへと上昇しました!

(これ以上のレベルアップはできません、残りのXPは保存されます。できるだけ早く進歩してください。)

……

あなたのネクロマンシーサモンの魔法レベルが8レベルへと上昇し、契約スロットが1つ増えました!

あなたの知性+1

あなたの感知能力+1

……

新たな能力「インスタントサモン」を獲得しました!

新たな能力「ポイントドロップ」を獲得しました!

あなたの能力「腐膿袋コントロール」が「腐膿袋マスタリー」へと上昇しました!

より高レベルの魔法を学ぶことができます!

……」

……

マシューの目の前に続々と情報が流れていく。

大きな満足感が彼の心を満たす。

属性と能力の育成はマシューの予想通りだった。

それどころか、経験値が3レベルも上がり、余っているほどで、予想以上に豊富だった!

彼が毎日死者の瞑想術で得られる経験値よりもはるかに多い!

しかし。

マシューが最も重視していたのは、ボーンドラゴンの召喚だった!

……

「ネクロマンシーサモン(ボーンドラゴン):あなたは、自分に仕えさせるボーンドラゴンを召喚できます。

備考:このボーンドラゴンのレベルは15レベルを超えません。

契約ステータス:契約済み」

……

「既に契約済みの状態だって、これで一つ契約スロットを節約できる!」

マシューは大変満足そうだった。

ネクロマンシーは死霊魔道士の得意な技で、レベルが上がるにつれて強化される。

そして、職業レベルが2つ上がるごとに、「契約スロット」が一つ増える。

これは特定の召喚物と契約するためのものである。

契約対象を召喚する際、死霊魔道士が消費する魔力は少ない。

また、双方の連携もより密接になる。

長い時間が経つと。

一部の死霊魔道士は、自分の契約した召喚物に対して感情を抱くことさえある。

……

カニンヘン員の鉱山。

そこには秘密の地下洞窟が存在した。

マシューはウィザードスタッフを手に持ち、初めてボーンドラゴンの召喚を試みた。

呪文の声が響き始める。

新たな能力「インスタントサモン」の援護のもと。

マシューの口から最初の音節が出されると同時に、闇の洞窟内に負のエネルギー次元へ向かう逆六芒星の魔法陣が点滅し始め、灰白の骨の粉と幽緑の磷火が空から舞い落ちる。

マシューは凝視した。

闇の中に半分沈んでいる骨巨獣が警戒しながらそこに構えていた。

「ふ~」

ボーンドラゴンの頭蓋内から幽青色の魂の火が明るく輝いた。

それは冷淡にマシューを見つめていた。

マシューは彼に見つめられて少し緊張してきた。

空気中からは風が洞窟を通り抜けるような「ふ~」の音が絶え間なく響いていた。

このように一人と一頭のドラゴンが拮抗していた。

マシューの全身の筋肉は異常なほど硬直していた。

これは彼が初めてレベルが自分のほぼ二倍に迫る怪物に直面した瞬間だ!

既に締結された契約によって、彼は薄らと感じられる竜威から逃れることができた。

けれども、その巨大な姿勢がもたらす圧迫感と、戦慄を引き起こす姿からくる恐怖感は、簡単に消去することはできない。

……

「だからこそ、世の中の人々が死霊魔道士に偏見を持つのも無理はない。死者の領域の存在は何れも人を怖がらせ、そんな恐怖を直視できる人間がどの程度いるだろう?」

マシューは心構えを整えた。

彼はウィザードスタッフを振り、ボーンドラゴンに命じた。

「頭を下げろ」

ボーンドラゴンの動きは遅いが確実だ。

その長い首はゆっくりと洞窟の乱石や天井を避ける。

そして、しっかりとマシューの前の地面に着地した。

その下顎が地面に密接した。

幽青色の魂の炎が一瞬一瞬と揺らいだ。

なんだか。

マシューは、目の前にいる巨大な存在の魂の炎からなぜか緊張感を感じ取った。

マシューはその場で笑ってしまった。

ボーンドラゴンが緊張しているなら、彼が緊張する必要はない。

彼は勇気を出してボーンドラゴンの頭の上に踏み込んだ。

それに対して、ボーンドラゴンは「うーうー」という音を立てて、非常におとなしそうにした。

マシューの心の中は大いに安堵した。

彼は身をかがめてボーンドラゴンの骨を撫でた。

カサカサしている。

そして、とても粗雑だ。

見れば見るほど何も立派な骨ではないことがわかる。

「こんど金が手に入ったら、きっと君のために良質な骨を新しくするよ」

マシューは思わず言ってしまった。

「うー……」

ボーンドラゴンは低くうめき声をあげた。

……

「フェロリウス(ボーンドラゴン)があなたに対する忠誠度を85に上昇させました!」

……

マシューは笑った。

「そんなに簡単に満足するのか?ならばこれからもっと餌を用意してやろう」

ボーンドラゴンはゆっくりと頭を上げた。

その動きは小さかった。

その結果、マシューは更に高い角度からこの洞窟を見下ろすことができた。

この場所は元々は採掘者たちの楽園だったが、埋蔵量が尽きてその後は放置され、ドッグヘッドトライブに占拠されていた。

しかし、ブラッドフラッグ一族がローリングストーンズタウンの支配を決めた後、地元の君主は何度もドッグヘッドの追放命令を出し、周辺の冒険者や傭兵たちが次々とドッグヘッドたちを狩り出し、この地域は次第に無人で死んでいった。

マシューが知っている限りでは、

採掘者の盆地には、同様の洞窟が他にもたくさんある。

これらの洞窟は非常に複雑に入り組んでいる。

一部の洞窟は、さらに広範な地下世界に繋がっていると噂されている。

そこが真のドッグヘッドたちが撤退した場所でもある。

……

普段マシューはほとんどこういった場所に足を踏み入れない。

しかし、ボーンドラゴンのサイズは極めて大きく、この地下洞窟でもほとんど収容しきれない。それが地上に出てしまったら、どれだけの騒動を招くことになるだろう。

彼は控えめで現実的な人間だ。

彼は自分が死霊魔道士であることを隠すつもりは一切ない。

しかし、それでも無意味にトラブルを引き起こすつもりもない。

「これからは洞窟の中で過ごすことにしよう」

そう考えながら、

マシューはボーンドラゴンの身体を一つ一つ丁寧に調べた。

ついでに、そのデータもチェックした。

……

「名前:フェロリウス

種族:ボーンドラゴン(LV15)

属性:力力24/俊敏性10/体力17/知性4/意志10/魅力14

特性:盲感(60フィート)/耐性:酸性/耐性:冷気/感覚鋭敏/不死の生物

能力:お世辞/ファーストアタック/死者のドラゴンオーラ/ラッシュ/テールスイープ……」

……

「お世辞?」

マシューは後知恵がついた。

「さっき、彼は私に取りこまけていたのか?」

まるでマシューの考えを裏付けるかのように。

足元からまた、「フィーフィー」というボーンドラゴンの音が聞こえてくる。それと同時に魂の火の躍動する情緒が伴っており、何となくお世辞めいたものがあるようだ。

マシューの心の中では、ボーンドラゴンの力強く凛々しい男性像が一瞬で崩れ去ってしまった。

彼は我慢できずに足を踏み鳴らした:

「君の名前が難しすぎる。」

「これからは『チビビ』と呼ぶことにする!」

……

フェロリウスは一瞬茫然となった。

しかし、その直後、彼の魂の火が激しく揺れ動き始めた。

契約を通して、喜びの感情が一瞬にして溢れてきた。

……

「感謝の名付けの恵みに対し、フェロリウス(ボーンドラゴン)のあなたへの忠誠度が90に上がりました!」

……

おそらくはあまりの喜びのためか。

チビビの頭が大きく揺れた。

マシューはちょっと落ちそうになった!

幸い、彼の感覚と敏捷性は非凡だ。

すっと小跳びをした。

マシューは洞窟の影にしっかりと着地した。

しかし、その一瞬。

彼は何かがおかしいと感じた。

足元の違和感が伝わってきた方向を見た。

彼は血まみれの服に足を踏み入れていた。

……