藤原徹はこの子がそれほど馬鹿じゃないと感じた。自分が二人の夫婦の邪魔をしたことを分かっているから、申し訳なく思っているのだろう。
さっきまで藤原奥様のキスに夢中だったのに、邪魔されてしまった。今すぐこいつを殴りたい気分だ!
藤原徹は冷たい目で藤原明を見つめ、休憩室から出て行くのを待っていた。
ところが藤原明は突然駆け寄って、二人を引き離し、真剣な面持ちで言った。「夫婦喧嘩は当たり前のことだけど、藤原徹、男なんだから少しは譲るべきだろう。なのに手を上げるなんて、どういうことだ?顔が真っ赤になってるし、唇まで腫れてる!」
高倉海鈴:「??」
藤原明がここまで生きてこられたのは、本当に奇跡的だ。
藤原徹は眉をひそめた。
藤原明に対して、本当に言葉が出なかった!
彼はいつも冷淡で情け容赦ないため、一目で周りの人々を震え上がらせることができたのに、この二人だけは別だった。
一人は時々頭の回転が遅い高倉海鈴。
もう一人は馬鹿正直で純粋すぎる藤原明だ。
藤原明は二人を観察して、もしかして高倉海鈴が自分とトランプをしたから、藤原徹が嫉妬して喧嘩になったのかと考えた。
突然怖くなって、思わず数歩後ずさりした。
藤原徹のような気分屋が、嫉妬で彼を殴りかかってくるんじゃないだろうか?
仕方ないよな!自分がイケメンだから誤解されやすいけど、義姉さんに手を出すつもりなんて全然ないのに。
でも二人とも怒りが収まったみたいだし、もう喧嘩はしないだろう。やっと安心できた。
藤原徹は静かに高倉海鈴に尋ねた。「彼も一緒に行く?」
藤原明との初対面は良くなかったものの、高倉海鈴は彼が我儘に見えても本質は悪くないことを知っていた。
あの時、藤原明が八尾夢子と一緒に渡道ホールで彼女に嫌がらせをしたのは、藤原徹が結婚してから親友に冷たくなったことが許せなかったからだ。
そして彼の目には、八尾夢子は良い友達だから、彼女のために立ち上がるべきだと思っていた。
だから、藤原の次男はただ純粋すぎて、バカすぎて、心は優しいのだ。
高倉海鈴は答えた。「一緒に行きましょう。」
藤原明は呆然と二人を見つめた。なんで急に自分がこんなに卑小に感じるんだろう?