灯が消えた瞬間、藤原徹は安堵のため息をつき、静かにソファーに座っていた。
周りは静寂に包まれ、彼は高倉海鈴を待っていた。
しかし、長い時間が経っても、高倉海鈴の足音は聞こえなかった。
藤原徹は目を伏せ、暗闇の中で寂しさが滲み出ていた。
高倉海鈴の言葉が耳に残っていた。彼女の目には、二人は契約結婚に過ぎず、人前では夫婦を演じ、誰もいない時は他人同士でしかなかった。
「ふん!」
藤原徹は口角を歪め、自分が勝手に期待していたことに気づき、高野広に電話して照明を復旧させようとした時、足音が聞こえてきた……
「藤原さん、いますか?」
藤原徹の心臓が震え、携帯が床に落ちた。
目の前は真っ暗だったが、それでも高倉海鈴の声がする方を見つめた。
高倉海鈴の足取りは少し乱れ、声は微かに震えていた。「動かないでください、今行きます。」
男の口角が微かに上がった。
もし彼女が本当に自分のことを気にかけていないなら、これからは契約夫婦のままだったはずだ。
でも彼女は現れた……
彼女の心の中に自分がいる、だから逃がすわけにはいかない。
……
高倉海鈴は懐中電灯を持ち、藤原徹がソファーに静かに座っているのを見て、やっと安心して急いで近づいた。「藤原さん、あなた……」
藤原徹は手を伸ばして彼女の腰を抱き、自分の胸元に引き寄せた。
さっきまで何も見えなかったから、誤って物を落としてしまったのに、高倉海鈴が本当に下りてきてくれた。
高倉海鈴は彼にしっかりと抱きしめられ、二人の体が密着していた。
藤原徹が失明していても、彼女を抱きしめることができた。
「やっと来てくれたね。」
高倉海鈴は顔を赤らめ、逃げようともがいた。
藤原徹は息を荒げながら、無限の喜びを込めて低い声で言った。「海鈴、来てしまった以上、もう逃げられないよ!」
そして冷たくも柔らかい唇が重なり、的確に彼女の唇を捉えた。
高倉海鈴は体を強張らせ、両手で彼のシャツをきつく掴んだ。
ドキドキ!
心臓が激しく鼓動していた。
以前藤原徹にキスした時は、味覚を取り戻すためで、何の感情も混ざっていなかった。