高倉海鈴は尋ねた。「お兄さん、金川草を持っていますか?」
秋山明弘は困惑した表情で答えた。「私が金川草を持っているはずがないでしょう?それはとても貴重なものですよ。それに、そんなにたくさんの金川草を何に使うんですか?」
高倉海鈴は少し落胆した様子だった。
秋山明弘は興味深そうに「藤原徹のためですか?海鈴、君が男性にここまで心を砕くのを見るのは初めてだよ」
高倉海鈴は慌てた様子で即座に否定した。「そんなことないわ」
電話を切った後、高倉海鈴は考え込んだ。自分は藤原徹のことを気にしすぎているのだろうか?
……
その時、藤原徹はソファーに優雅に寄りかかり、目を閉じたまま淡々と尋ねた。「村上家の者がネット上で噂を流し、私の妻を中傷しているそうだな?」
高野広は慎重に答えた。「彼らは、あなたが村上さんを見捨てて奥様と結婚したことについては不問に付すと言っていましたが、今回は数本の草のために村上家との関係を断絶するとのことで、すべては奥様が仕組んだことだと…」
藤原徹は平然とした表情で頷いた。「ふむ」
そして机の上の契約書を指差して「それならば、徹底的に関係を断ち切ろう」
高野広は息を飲んだ。村上家がネット上で奥様を中傷したことで、社長の怒りを買ったに違いない。
「奥様は?」
高野広はすぐに答えた。「まだ裏庭であの草の片付けをしています。奥様はなぜあの草にそれほどこだわるのでしょうか?踏み潰されたのなら、また植えればいいのに…あの草はそれほど貴重なのでしょうか…」
藤原徹は急に立ち上がり、裏庭へ高倉海鈴を探しに行った。
その時、彼女は踏み潰された薬草を丁寧に地面に並べていた。藤原徹は尋ねた。「本当にこの薬草をそれほど大切に思っているのか?」
高倉海鈴は黙っていた。藤原徹の目に問題があることを知ってから、彼女は金川草を育て始めていた。
大切に保管していた種を取り出し、毎日丹精込めて育てた。やっと育ってきて、藤原徹の解毒に役立てようと思っていたのに、すべて村上真由美に台無しにされてしまった!
「裏庭の警備員はすでに処罰を受けた…」彼は突然言葉を詰まらせ、少し慌てた様子で優しく慰めた。「もう悲しまないで」