高倉海鈴はソファの姿勢を変え、ゆっくりとお茶を一口すすった。高倉彩芽の言葉など全く気にも留めていなかった。
藤原涼介は眉をひそめた。彼は彩芽の言葉に少し違和感を覚えたものの、心の中では彩芽のことを優しく善良な人だと思っていた。彼女があの見知らぬ女性のためを思って言ったのだと考えたが、その女性は明らかに感謝する様子もなかった。
高倉彩芽は藤原家の当主の怒りを買うリスクを冒してまでその女性に忠告したのに、その女性はどうだ？傲慢な態度で、彩芽のことなど全く眼中にない。この態度に涼介も腹を立て、冷たい声で言った。「君は一体誰なんだ？俺は藤原家の跡取りだが、君のことは見たことがない。最後にもう一度警告するが、当主は招かれざる客を嫌う。さっさと出て行け。さもないと後悔することになるぞ」
今度こそ、高倉海鈴はようやく反応を示した。片手で顎を支え、艶やかな唇を開いて言った。「後悔する？どんな後悔になるのかしら？」
白く細い指でテーブルの上の美しい茶菓子を摘み、魅惑的で心を奪うような眼差しを向けながら、お菓子を食べつつ、水のような瞳で藤原涼介を見つめ、彼の答えを待っているようだった。
藤原涼介は彼女が突然見せた色気に魅了され、一瞬言葉を忘れてしまった。傍らに立っていた高倉彩芽はスカートをきつく握りしめた。彼女の涼介が、この女にうっとりと見とれているなんて、許せない！
高倉海鈴はピンク色の舌先で指先に残った菓子を舐め取り、瞳を優しく細め、唇から清らかな笑い声をこぼした。「ねぇ？藤原徹さん、招かれざる客にはどんな報いが待っているのかしら？」
藤原徹は表情を変えず、シンプルな黒のシャツが彼の冷淡な目元をより引き立てていた。藤原涼介と高倉彩芽は同時に振り返った。彩芽の心臓は大きく鼓動した。これが藤原家の当主なの？頬が赤く染まる。あれほどの財力を持つ藤原家の当主が、こんなにも優れた容姿の持ち主だなんて。まさに天に愛された者だわ。
藤原家の当主は本当に美しかった。彼女が今まで見てきたどの男性よりも美しい！彼女の目には藤原涼介も一級品に見えていたのに、藤原徹の前では色あせて見えた。これまで涼介を宝物のように思っていたけれど、今は後悔している。藤原徹のような男性こそ自分にふさわしい、藤原徹こそが自分の隣に立つべき人だと。
