「こうしましょう。そのうち高倉おじさんに彼と久保おばさんの結婚について話を持ちかけて、早く結婚式を挙げてもらいましょう。そうすれば、あなたは正式に高倉の長女になれるわ」
高倉国生がこれまで久保朱里との結婚式を挙げなかったのは、高倉海鈴の母親の遺言があったからだ。その遺言には、高倉国生が高倉海鈴が会社を引き継ぐ前に再婚した場合、現在の地位を失い、全ての会社株式がゼロになると書かれていた。そのため、久保朱里はこれまで何の肩書きもなく高倉国生の傍にいて、高倉彩芽の立場も微妙なものとなっていた。
高倉海鈴が戻ってくる前は、彼らは対外的に高倉彩芽を高倉の長女と称していたが、それは名ばかりのものだった。
藤原涼介は自分の提案がとてもいいと思った。今や高倉海鈴は這い上がれないほどのダメ人間で、高倉グループも高倉国生の支配下にある。彼と久保おばさんが結婚式を挙げる時期が来たのだ。
高倉彩芽は微笑んで、しなやかに藤原涼介の胸に寄りかかり、感謝の言葉を述べた。「涼介、私にこんなに良くしてくれて、どうお返ししたらいいか分からないわ」
藤原涼介は彼女の頭を撫でながら言った。「バカだな、当たり前じゃないか」
高倉彩芽は恥ずかしそうに微笑み、俯いた瞬間に目に鋭い光が走った。藤原徹を手に入れる機会は後でいくらでもある。でも、母を正式な立場にする機会はそうそうない。涼介の提案は父もきっと聞き入れるはず。これを機に正式に高倉の長女になれて、高倉海鈴のあの死んだ母親の遺産も手に入れられる。考えただけでも気分がいい。
……
一方、高倉海鈴は藤原徹について二階に上がった。彼の言うプレゼントが何なのか気になっていた。
藤原徹という人は確かに性格は悪いけれど、彼が褒美と呼ぶものはそれなりのもののはずだ。他人が欲しくても手に入れられない、多くの人が羨むようなものに違いない。
だから高倉海鈴は期待していた。
藤原徹は書斎の机から一つの書類を取り出し、後ろについてきた高倉海鈴に手渡した。「見てみろ、お前への褒美だ」
高倉海鈴は興奮した様子で茶封筒の表紙を開け、中身を取り出して一目見た途端、むせた。「ゴホッ、これって冗談でしょう?」