田中晴香が学年一位だと言い切れたのは、今回の英語テストに高倉彩芽が参加しないからだった。
これまでのテストでは、いつも高倉彩芽が一位で、田中晴香が二位だった。
教務課で、高倉彩芽は久保朱里に付き添われて欠席届の手続きをしていた。教務主任は笑顔で言った。「一回のテストを受けないくらい大したことはありませんよ。高倉さんはいつも成績優秀ですし、今回体調不良で受けられなくても影響はないでしょう。ただ少し残念なのは、今回の一位の生徒を国際翻訳コンテストに推薦する予定だったんですよ。」
高倉彩芽の表情が一瞬こわばり、すぐにため息をついた。「仕方ありません。私の体が弱いせいで。」実は彼女は、今回のテストが大会の選考を兼ねていると聞いて、わざと欠席することにしたのだ。これまでの英語テストは全て替え玉受験で一位を維持してきたが、国際大会は非常に厳格で、不正の余地がないため、病気を装って受験を諦めたのだった。
しかし……
彼女は軽く笑って言った。「私は受けられませんが、姉なら受けられるはずです。高倉海鈴のことはご存知ですよね？」
教務主任は頷いた。「もちろんです。デザイン学部の高倉先生ですね。若くして本校の特別招聘教員になられましたが、学校での姿を見かけることは少なく、接する機会があまりないんです。」
高倉彩芽は言った。「そうなんです。姉は成績優秀で、私と同じ年齢で学校の教員になれたほどです。もし今回のテストで優秀な生徒が出なかった場合は、姉を推薦してみてはいかがでしょうか。姉なら必ず学校に国際大会での栄誉をもたらしてくれるはずです。」
教務主任の目が輝いた。そうだ、高倉彩芽が欠席する中で国際大会をどうするか悩んでいたところだった。高倉海鈴は高倉彩芽とほとんど年齢が変わらないし、もし高倉海鈴が参加できれば……
高倉彩芽は教務主任が心を動かされたのを見て、さらに付け加えた。「でも、姉が教員だからといって特別扱いするわけにはいきませんよね。こうしてはどうでしょう。主任先生、姉にも今回のテストを受けさせてみては……」
教務主任は少し躊躇した。「この件については高倉先生と相談してみないと。本人の意思次第ですからね。」教員は学生とは違う、高倉海鈴が同意しなければ強制することはできない。
