月瑠が手を出すのは彼女たちの品位を損なうことを恐れ、リーダーの女子は慌てて笑いながら言った。「私たちは喧嘩をするつもりはありません。このお嬢様は本当に冗談がお好きですね」
鈴木月瑠は冷たい表情で「私は喧嘩が得意なの」
でも私たちは得意じゃないわ!
「鈴木さんに目をかけていただけるなんて、このお嬢様はきっと素晴らしい方なのでしょう。暴力なんて女の子らしくありませんわ」リーダーの女の子は気まずそうに笑った。
鈴木月瑠は目を細めて「私が優秀なのは分かってるわ。あなたに褒められる必要はないわ」
なんて謙虚じゃないの、ちょっとした褒め言葉でそんなに舞い上がって?
池田滝がまだ横から口を挟んで「私たちの月瑠姉の言う通りです。鈴木さんは彼女の美貌に惹かれただけですよ」
妹の美貌を貪るとの非難を受けた鈴木静海「???」
でも鈴木月瑠は冗談を言っているわけではなく、確かに彼女はとても美しかった。
その女性たちは内心激怒していた!
これじゃあ全然太刀打ちできないわ!
かなわないけど、強引にでも勝負しなきゃ!
この鈴木家の百年に一度のパーティー、みんな正装して来たのに、このまま惨めに帰るわけにはいかないでしょう?
一同は顔を見合わせ、次々と口を開いた。
「私はピアノ8級です。大したことはありませんが、悪くもありません。久我お嬢様は田舎出身と聞きましたが、ピアノに触れたことはありますか?」
リーダーの理香が口を開いた。
元々彼女たちは鈴木月瑠のことを知らなかったが、芸能ゴシップに熱心な人もいて、以前の鈴木月瑠と一橋貴明の噂は、すぐに押さえ込まれたものの、大きな話題になっていた。
そこで、彼女たちは鈴木月瑠の素性を全て調べ上げていた。
6歳で田舎に送られたこと、十代で少年院に入れられたこと、一橋家の若旦那に捨てられたこと……
とにかく、彼女たちの認識では、鈴木月瑠は悪い女だった。
一橋さんと怪しい関係にあったかと思えば、今度は厚かましくも鈴木家のパーティーに顔を出す、恥知らず!
鈴木さんにこの女の本性を見せてあげないと!
「ピアノ?」鈴木月瑠は眉を上げた。