森の中には監視カメラが多かったため、彼女はカメラが回転する死角を利用して、素早く木々の間を飛び移り、すぐに森を抜けることができた。
しかし、基地はこの山脈の側に建てられており、山を利用して身を隠していたが、山の上に人がいれば、見張り台からはっきりと見えてしまう。
基地に行くには、正面玄関から堂々と入る以外に、この山を通る方法しかなかった。
久我月は考え込んで、ポケットからガムを取り出した。
いや、正確にはガムではなく、中村楽が開発した小型爆薬で、非常に危険な酸素接触型の爆発物だった。
久我月は素早く爆薬を岩に貼り付け、すぐに遠くへ逃げた。
この種の爆薬は酸素と接触すると10秒以内に爆発し、その威力は想像を超えるもので、巻き添えの危険性も高かった。
そのため久我月は遠くまで逃げ、そもそも中村楽がこの爆薬を発明した後すぐに破棄したのも、危険すぎたからだった。
久我月が改良を加えた後は巻き添えの危険性は低くなったが、予期せぬことは起こりうる。死を恐れる久我月は、かなり遠くまで逃げた。
5秒で隠れ場所を確保し、心の中でカウントダウンを始めた:5、4、3、2、1...
ドーン!
巨大な爆発音が響き渡り、小さなキノコ雲が立ち上った。ただし、そのキノコ雲は黒ではなく白色だった。
爆発で吹き飛ばされた岩石は自然と下へ転がっていった。
白色基地(はくしょくきち)の見張り台はこの出来事に不意を突かれ、久我月には中の様子が混乱しているのが見えた。
彼女はその混乱に乗じて、中に潜り込んだ。
30分後、久我月はバスの中でスマートフォンを見ていた。
彼女は日本の科学研究基地の重鎮に育てられ、国への帰属意識があり、本来なら白色基地からチップを盗みたくはなかった。
しかし、デルタは大西洋の真ん中に位置し、そこの天然ニッケル鉱床を日本が採掘できる可能性は低かった。
さらに、チップがデルタ研究所の手に戻ったとしても、彼らには解読できないだろう。
中村少華は向かいの商店街に行き、一品楼蘭のガラス窓の前に立つと、案の定、百里紅裳の姿が見えた。
少女は窓際の席に座り、紫色の花柄のワンピースを着て、雪のように白い顔立ちで、まつげがパチパチと揺れていた。