一橋貴明がドアの隙間から手を伸ばしてタオルを取り、礼儀正しく微笑んで「ありがとう、月瑠」と言った。
礼儀正しいものの、声には笑みが含まれており、機嫌は良さそうだった。
久我月は隣の椅子に座ってゲームを続けていると、すぐに一橋貴明が出てきた。
いや、違う。バスタオル一枚を巻いて出てきたのだ。
久我月は仙人のようなオーラを放つ一橋貴明を見て、暑さのせいか頬が熱くなり、思わず尋ねた。「なぜ着ないの…」
一橋貴明は笑って「暑いから」と答えた。
久我月は16度に設定されたエアコンを見て、そして鳥肌が立っている自分の腕を見たが、何も言わなかった。
一橋貴明は少女の顔をじっと見つめ、その瞳には熱い感情が満ちていた。
「お坊ちゃん」
久我月は彼に服を渡し、エアコンの温度を上げた。「私も見た目重視で寒さは我慢するけど、あなたはもう年なんだから、そんな無理はできないわ。年取ったら色々病気になっちゃうわよ」
一橋貴明「……」
久我月は続けた。「お坊ちゃん、今のうちから体を大切にしないと、どんどん弱くなっちゃうわよ」
一橋貴明はクローゼットから白いTシャツを取り出しながら、その言葉を聞いて口角を引きつらせ、低い声で言った。「……月瑠は知らないのかな、男性に対して体が弱いなんて言っちゃいけないってこと?」
なぜダメなの?
久我月は理解できず、一橋貴明が振り向いて、唇を引き締め、無表情な様子を見た。
彼女は母親のように気遣って尋ねた。「お坊ちゃん、どうして不機嫌なの?」
一橋貴明は身なりを整え、久我月の無邪気な表情を見て、目が赤くなり、突然大胆なことを言い出した。「月瑠がキスしてくれたら、僕は嬉しいんだけど」
久我月が反応する間もなく、彼は彼女を壁際に追い詰めた。「もっと何回かキスしてくれたら、あるいはしばらくキスしてくれたら、もっと嬉しいと思うんだ」
小池紀寒は一橋貴明に電話を切られ、この時車を飛ばして彼の家に向かっていた。竹内北は止める間もなかった。
主寝室のドアまで駆け上がると、ドアが少し開いていて、一橋貴明が鈴木月瑠を壁ドンしているのが見えた。
小池紀寒「????!!!!!」