一橋嬌が出て行くと、すでに一橋貴明から指示を受けていた竹内北は、すぐに大きく手を振って言った。「お前たち、一橋嬌お嬢様から目を離すな。彼女に何も動きを取らせるな」
命令が下されると、数人のボディーガードがすぐに一橋嬌を取り囲み、連れて行った。
今度は、奥様は何も言えなくなった。
一橋嬌が独断専行でこれほどの災いを引き起こしたのに、一橋貴明が殺さなかったのは、一橋家のご家族だという面子があったからだ。
本来なら長男家は威勢よく強気だったのに、今となっては、先頭に立つ勇気もなくなった。
久我月は一橋太夫人の脈を取り始め、十分間もかけて診察し、その間ずっと表情は厳しく、一橋貴明をとても不安にさせた。
十分後、久我月は結論を出した。
彼女は一橋貴明を見て、声を低くして言った。「あなたの妹は本当に厄介者ね。太夫人の状態はとても悪く、手術が必要よ」
「高橋様を呼んできて。私一人では難しいわ」彼女は銀針を取り出して消毒し始め、太夫人の重要なツボに刺した。
一橋貴明はすぐに人を遣わして高橋様を探しに行かせた。
三十分後、高橋様は一橋家に連れて来られた。白髭を蓄えていたため、仙人のような雰囲気があり、高橋占いと呼ばれるようになった。
京都では針の大村と高橋様についてよく冗談を言われていた。本来なら漢方医こそ仙人のような風格が似合うのに、高橋様が得をしたという話だ。
知らない人は、高橋様が漢方医だと思うほどだった。
高橋様はちょうど実験室で実験をしていたところ、突然空から降ってきた黒服のボディーガードたちに捕まえられ、一橋家に連れて来られた。
「このバカ者どもめ、年寄りを敬う気持ちはないのか?私を下ろさないと、ただじゃおかないぞ!」
高橋様は数人のボディーガードに捕まえられ、今は両足をバタバタさせながら叫んでいた。心の中では、もうすぐ完成するはずだった実験のことが気がかりだった。
ボディーガードは高橋様の唾を飛ばしながらの抗議など気にもせず、そのまま太夫人の寝室まで連れて行った。
「お願いですから、私を下ろしてくれませんか。この老骨が砕けそうです!」
高橋様はボディーガードに下ろされ、足が地面に着いた時、まだ心臓がドキドキしていた。彼は一橋貴明を罵ろうとしたが——