久我月:「これは私が以前手に入れた古い処方箋です。遺伝子データと照らし合わせたところ、適合する血液型や骨髄が見つからないので、とりあえず漢方で持たせるしかありません。この処方箋は補血益気のもので、あなたの病気に効果があるはずです」
「古い処方箋?」
栗本放治は再び写真を開いて見つめた。
ボールペンで書き写されたもので、紙は黄ばんでおり、確かに数年の歴史を感じさせた。しかも写真の画質は意図的にぼかされており、栗本放治は何度も見直して、やっと何が書かれているのか判別できた。
久我月は頷いた:「ええ、古い処方箋です。言うべきことは言いました。信じるか信じないかはあなたの自由です」
そう言って、電話を切った。
伽藍が研究所から二号試薬を入手できるかどうかは一つの問題で、二号試薬を新たに製造することは、また別の問題だった。どちらにしても時間がかかりすぎる。
栗本放治は呆然とした目で切れた通話画面を見つめ、我に返ると、思わず笑みを浮かべて声を掛けた:「木下」
木下は彼の専属医で、栗本放治の声を聞くとすぐに入ってきて、緊張した様子で尋ねた:「栗本様、どこかお具合が悪いのですか?」
栗本放治は首を振り、深い眼差しで古い処方箋を見つめた後、それを木下に転送した:「この処方箋を見て、準備してくれ」
「漢方薬ですか?」
木下は処方箋を見て、これが重要だと理解した:「栗本様、この処方箋はどちらで手に入れたのですか?今のお体は漸く安定したところです。むやみに漢方薬を服用するのは危険です」
栗本放治の瞳の色が一瞬揺らぎ、昨夜の気高く反抗的な顔が脳裏をよぎった。彼は携帯を脇に置いた:「ああ、じゃあまずこの処方箋を久我様に送ってみてくれ」
「はい」
木下は承諾し、携帯を持って久我様に電話をかけに出て行った。
久我様は国内医学院のアカデミー会員で、日本医学会の副會長を務めており、漢方医学にも非常に精通していたが、主に血液疾患の研究に従事していた。
栗本放治の血液疾患は、久我様が直接担当していた。
……
竹内北が久我月を病院まで迎えに来た。七男の若様が病気だと聞き、中村少華と松本旻が彼の側にいた。
約20分で目的地に到着した。