中村少華は深刻な表情で伊藤明を見つめ、厳しい口調で言った。「伊藤先生、我が一橋七男若様を治せるなら、私と松本様から必ず厚く礼をさせていただきます」
「次郎様、ご安心ください。私は一橋七男若様の治療に全力を尽くします」伊藤明は頷いて、一橋貴明の状態を確認しに向かった。
病床に横たわる一橋貴明は、唇が蒼白いだけでなく、顔にも青紫色が見られたが、それほど目立つものではなかった。
「次郎様、七男の若様がこのような状態になってどのくらい経ちますか?」伊藤明は中村少華の方を向き、眉をひそめて、かなり深刻な表情を浮かべた。
中村少華は状況がよく分からなかった。七男の若様が目覚めないと聞いて、急いで駆けつけたのだった。
竹内北が説明した。「七男の若様は昨夜早めに就寝されましたが、今朝八時になっても起きてこられず、意識不明の状態だと分かりました」
「先ほど中村先生が七男の若様を全身検査しましたが、異常は見つかりませんでした。各臓器の反応も正常です」
なんて不可解な。
伊藤明は意識不明の一橋貴明を振り返り、眉間にしわを寄せた。先ほどは大まかな診察しかしておらず、具体的な病因も確信が持てなかった。
そのため、何も言わなかった。
西洋医学の医師たちは期待に満ちた表情で彼を見つめ、確信に満ちた口調で言った。「名医伊藤が来られたのだから、必ず七男の若様を治せるはずです。もう震える必要はありませんね」
重責を担った伊藤明は、なぜか少し緊張した。「…………」
七男の若様の状態について話そうとした時、竹内北が咳払いをして言った。「小池大御爺さんの指示では、久我月さんだけが七男の若様の治療を担当することになっています」
小池大御爺さんはもう一つの意味も込めていた。もしこの病気を久我月でも治せないのなら、伊藤明のような若い世代にはなおさら手の施しようがないということだ。
もちろん、小池大御爺さんが久我月の正体を明かすほど愚かではない。
彼も久我月がいくつの正体を持っているのか分からなかったが、安田様の話では、国内の権威ある専門家たちよりも頼りになるとのことだった。
「何を馬鹿なことを言っているんだ?」