山中希美は一言も言わず、物を受け取り、ゴミ箱の前まで歩いていくと、それらの物を全てゴミ箱に捨てた。
彼女は大人しく弱々しくなったものの、骨の髄まで反抗的で尖った部分を持っていた。
あの人たちは、かつて彼女の母親に唾を吐きかけたことがある。山中希美は、たとえ飢え死にしようとも、彼女たちの物は受け取らないだろう。
だから、中村楽が彼女の母親が売春婦だと知った時、驚きの表情を見せた。その時、山中希美は中村楽がきっと自分を嫌うだろうと思った。
しかし山中希美が予想もしなかったことに、中村楽は冷たく柴田奈々子を叱りつけた。「それがどうしたの?それがあなたたちが人をいじめる理由になるの?」
「年も若いのに、人をいじめるのは上手いわね。これがあなたたちの親の教育なの?悪い人とどこが違うの?」
中村楽はその時まだ7歳だったはず。山中希美より数ヶ月年上で、小さかったけれど、おじいさんは軍人出身で、その威厳は既にそれらの子供たちを震え上がらせるのに十分だった。
山中希美は呆然とした。
中村楽が自分を助けてくれるなんて思いもしなかった。中村楽のような高貴な人は、助けてくれないまでも、自分から遠ざかるだろうと思っていた。
群衆の前に立つ、シンプルな服装の中村楽は、とても繊細な顔立ちをしていた。彼女の後ろには夕日が沈み、まるで雲の上の月のように輝かしく気高かった。
柴田奈々子は中村楽に言われて呆気にとられ、悔しそうに言った。「私のお母さんが言ってたの。あの子のお母さんは悪い人で、男の人を誘惑する人なの。山中希美も大きくなったらろくな女にならないって」
「あなたのお母さんが言ったの?」
冷たい声が中村少華の唇から漏れ、少年は眉を上げ、とても不機嫌そうに見え、その雰囲気は中村楽とよく似ていた。
小さな中村健太は柴田奈々子を冷ややかな目で見て、全く遠慮なく言った。「その通りだね。君のお母さんこそ人間じゃないよ」
柴田奈々子は叱られて、小さな顔が一気に赤くなった。
どこからそんな勇気が出てきたのか、中村少華を恐れることなく、怒って睨みつけた。「小僧、黙りなさい!私のお母さんのことを悪く言わないで!」
「母親がいても教育されていない愚かな奴め!」