「月瑠、これ全部一人で頼んだの?」一橋貴明は自然に久我月の隣に座り、優雅な笑みを浮かべた。
「うん」
久我月は足を組んで、もう一方の手で箸を持ち、まるでボスのような座り方で、とても豪快だった。
一橋貴明は穏やかな目つきで、深い眼差しで久我月を見つめ、彼女の器に手羽先と酢豚を取り分けた。「こんなに食べられるの?」
久我月は小山のように盛られた器を見て「……多分」
「最近仕事に行ってないの?」一橋貴明は何気なく尋ね、使い捨て手袋をつけてエビの殻を剥き始めた。
久我月は豪快に眉を上げ、その整った顔立ちは人を畏怖させるほどだった。「名義上だけよ。気分が良ければ行くし、悪ければ寝てるわ」
「ゴホッ……」
七男の若様はむせて、ウェットティッシュで唇を拭い、気品高く冷たい態度で尋ねた。「今夜、時間ある?」
「何するの?」
久我月の美しい顔には特に反応はなく、黒い瞳の奥には怠惰と慵懒さが漂っていた。
一橋貴明は久我月を一瞥し、薄い唇を少し上げ、声には艶めかしさが混じっていた。「中村家で今夜パーティーがあるんだ。一緒に行かない?」
「ふーん」
久我月は酢豚を一切れ口に入れ、ゆっくりと咀嚼していた。七男の若様が期待を込めて見つめる中、彼女は口を開いた。「じゃあ、暇じゃないわ。行かない」
一橋貴明「……」
携帯の着信音が鳴り、一橋貴明は画面を見た。栗本放治からの電話だった。彼は通話ボタンを押した。「今食事中だけど、何かあった?」
栗本放治の澄んだ声が聞こえてきた。「華子が今夜来るように言ってるんだけど、来る?」
一橋貴明が行かないと言おうとした時、久我月が彼を、いや、より正確に言えば彼の携帯電話を見つめているのに気付いた。
久我月は目を細めた。「栗本放治が行くの?」
七男の若様「……」
栗本放治が行かないとまだ言う前に、久我月は器の最後の酢豚を食べ終え、のんびりと言った。「しょうがないわね、付き合ってあげる」
七男の若様「!!!」
彼はパチンと栗本放治との通話を切り、完全に頭に来ていた。
なぜ栗本放治が行くと言うと月瑠は行くんだ?
「あなたは行くの?」久我月は彼を見て瞬きした。
「……行く」