ダンスをしているうちに……お嬢様たちの視線は、中村少華に釘付けになっていた。
中村少華は少女の細い腰に手を回し、彼女を見下ろしながら、二人だけに聞こえる声で言った。「お嬢さん、君は一体誰なんだ？」
突然彼の車の上に落ちてきて、今では母親までも虜にし、そして……姉さんも彼女を知っているようだった！
ようだった、というより間違いない！
百里紅裳は自分の手を引き抜き、中村少華の腰に回して、愛らしく彼を見上げた。「私は百里紅裳よ。あなたはもう知っているでしょう？」
中村少華は「……」
彼は言いようのない表情で少女の手を見つめた。
どうして話しているうちに、こんなにべったりと？
冷たく振り払おうとした時、突然いやらしい声が聞こえてきた。「おや、珍しいですね。中村次男の若様がこんな情熱的な一面を見せるなんて、女性と甘い雰囲気を出すなんて。」
「全く中村次男の若様らしくありませんね。」
栗本家の次男、栗本哲也は百里紅裳を一瞥し、目に驚きの色が浮かんだが、冷たい表情の中村次男を見ると、顔に軽蔑の色が浮かんだ。
彼は腹立たしい笑みを浮かべ、さらに腹立たしい言葉を吐いた。「京都にはどれだけ素晴らしい令嬢がいるのに、中村次男の若様の目に留まる人はいなかった。なるほど、若様はこういうタイプがお好みだったんですね。」
そう言って、大声で笑い出した。
中村少華が何か言う前に、栗本哲也は腕の中のパートナーの顎を持ち上げ、意味深な口調で言った。「私の連れもなかなかの美人ですが、中村次男の若様の目には、きっと塵のように見えるんでしょうね。」
「……」
中村次男の若様は栗本放治とは仲が良かったが、それは栗本家の全員と仲が良いということではなく、特にこの栗本次男とは反りが合わなかった。
百里紅裳は視線を戻し、つぶやいた。「本当に変ね。」
「何が変なんだ？」
中村少華は少女の言葉に応じて尋ねた。栗本哲也というバカには全く相手にする気がなかった。
栗本家の中で、彼が認めているのは栗本放治と長男だけだった。この栗本哲也と栗本寧は一体何なんだ？
百里紅裳は嫌そうに栗本哲也を見て、彼が本当に醜く、中村少華の百分の一にも及ばないことに気付いた。
